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樹氷(アイスモンスター)は北海道から石川県まで分布していたことが分かりました

掲載日:2023.02.03

本件のポイント

  • 樹氷(アイスモンスター)について、無意根山・長尾山・上ノ岳・白山の写真、ピヤシリ山・チセヌプリ・巻機山の文献が見つかりました。
  • 樹氷(アイスモンスター)は、かつて、北海道から石川県まで分布していたことが分かりました。

無意根山(定山渓)の樹氷の画像
無意根山(定山渓)の樹氷

図1 樹氷の分布(黒丸は現在ある、白丸はかつてあった)   の画像
図1 樹氷の分布(黒丸は現在ある、白丸はかつてあった)   

概要

 過冷却水滴と雪が針葉樹上で一体化して氷の塊となったものを樹氷(アイスモンスター)とよびます。現在は八甲田・八幡平・森吉・蔵王・吾妻山で見られますが、かつては北海道から石川県まで分布していたことを示す写真と文献が見つかりました。
 詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。

調査の経緯と結果

 「樹氷」には、過冷却水滴が凍結して氷となった「エビノシッポ」と、過冷却水滴と雪が針葉樹上で一体化して氷の塊となった「アイスモンスター」の二種類があります。現在、樹氷(アイスモンスター)は八甲田・八幡平・森吉・蔵王・吾妻山のみで見られますが、かつては長野県にも分布していたことが分かっていました。今回、日本各地で樹氷と表記のある写真や文献を調査しました。写真については鮮明なものを、文献については樹氷の成因を解明した高山植物学者の田邉(濱田)和雄氏と、田邉(濱田)和雄氏の山岳部の後輩で樹氷の成因を理解し「エビノシッポ」と「アイスモンスター」を区別のできる深田久弥氏の記述を採用しました。
 今回、見つかった写真(無意根山・長尾山・上ノ岳・白山)や文献(ピヤシリ山・チセヌプリ・巻機山)から、かつて樹氷は北海道から石川県までの日本海から50-60kmの内陸に分布していたことが分かりました。また、低緯度ほど樹氷の生成高度が高くなっていることや針葉樹の分布から今回見つかった範囲が樹氷のできていた最大の範囲と考えられます。
 北海道や新潟以南西の樹氷は温暖化に伴って1960年代にはできなくなりました。しかし、北海道・長野県では気温の低下によって、北アルプス・両白山地では気温の低下と少雪の場合にできる可能性があります。

北海道 ピヤシリ山(987m)北緯44度26分

 深田久弥:樹氷(1941年12月) 「山頂山麓(昭和17年7月発行)」
・・・わが国で樹氷で名高い所は、後に述べる蔵王のほかに、八甲田、八幡平、吾妻連山の一部・・・志賀高原の横手山の廣い山頂などが挙げられる。・・・・北海道などには方々にあるのだらうが、あまり知らない。ただ北見と天鹽(てしお)の堺にあるピヤシリ山に登った時、山頂の東側に揃った大きな原に、見渡す限り樹氷が群立してゐるのを見て、目をおどろかせたことがある。・・・

北海道 定山渓 無意根山(1464m)北緯42度55分

北海道 定山渓 長尾山(1211m)北緯42度55分

北海道 ニセコ連峰 チセヌプリ(1134m)北緯42度53分

田邉(濱田)和雄:霧氷の蔵王 「雪庇(昭和12年11月発行)」 注:「樹氷」を「霧氷」と記述している
・・・樹木全体をアイシングをかけて菓子の様に固めつけ、名状すべからざるグロテスクな立像にしてゐるのを見たのは、大正11年の冬、北海道のチセヌプリに登った時のことであった。これは実に素晴らしいものだ、と私は感嘆の眼を見張った。・・・其後も批處彼處(ここあそこ)で批の怪物に見参したが、蔵王山程に批の物が良く出来ている山を私は未だ知らない。

青森県 八甲田山(1584m)北緯40度40分

岩手県 八幡平(1613m)北緯39度57分

秋田県 森吉山(1454m)北緯39度59分

山形県・宮城県 蔵王山(1600m)北緯38度09分

福島県 吾妻山(2035m)北緯37度44分

新潟県 巻機山(まきはたやま)(1967m)北緯36度59分

 田邉(濱田)和雄:霧氷の話(1936年) 「山(3巻3号)」 注:「樹氷」を「霧氷」と記述している
 偖て今までは主に蔵王山に就て述べてきましたが、他の山では吾妻連山殊に家形山と西大巓(にしだいてん)との間も霧氷の怪物が出来ている所です。然し批處のは蔵王山のと比較すると幾分見劣りがします。巻機山直下の地図に針葉樹林の記号の入れてある少区域では、範囲は極く狭いが却て形の良い怪物を見ました。

長野県 志賀高原 横手山(2307m)北緯36度40分

長野県 菅平 根子(猫)岳(2207m)北緯36度33分

富山県 上ノ岳(北ノ俣岳)(2662m)北緯36度25分

 榎谷徹蔵:雲の上ノ岳へ:山岳(第17年3号)
 上ノ岳北方尾根より見たる黒岳 右下:上ノ岳尾根の樹氷状凍雪(しみゆき) 榎谷徹蔵氏撮影

石川県 白山(2702m)北緯36度09分

 柳澤文孝:2018年1月7日、白山で発見されたたアイスモンスター(樹氷)について:雪氷学会東北支部会
 (撮影 早川康浩氏)

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