ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2023年04月 > 学長定例記者会見を開催しました(4/6) > 『ホガースの時代(版画で読むイギリス)』出版
掲載日:2023.04.06
本書は、ホガースという「風俗画」の巨匠の絵を通して見るイギリスの風景です。風俗画は聖書や神話などを題材とする「歴史画」とは一線を画すジャンルで、当時の人々の滑稽だったり、ごく他愛もない「人生の1コマ」を切り取ることによって、下世話な「世帯風俗」を活写するものです。
ホガースの版画の分析を通して、当時のイギリスの赤裸々な風景が探求されます。そのイギリス的な風景を構成しているのは、拝金主義、金権政治、賄賂、汚職、監獄と公開絞首刑、蔓延する性病(梅毒)、ニセ医者といんちき薬の大流行、蟻地獄のようなギャンブル、見世物小屋と化していた狂人病院などです。
詳しくは、こちら(リリースペーパー)をご覧ください。
漫画やアニメは今や日本のお家芸ともいうべき豊穣な分野です。しかし、多くの人は、漫画はどこから来たのか、その由来にさほどの注意を向けません。現在、漫画の起源は主として二つあるとされており、一人はスイスで軽みに満ちた戯画を手がけたテプフェールで、もう一人はアクの強い諷刺画で知られるイギリスのホガースです。本書は、後者のホガースに焦点をあて、漫画の原型とはいかなるものだったかについても考察しています。
本書は、ホガースの風俗画を通して見えてくる十八世紀のイギリスの「実像」を掘り下げる試みです。実像を形成する主体は様々あり、たとえば、当時の腐敗政治、刑務所における賄賂の横行、バブルの崩壊、投資という名のマネー・ゲーム、娼婦らに蔓延していた性病、いんちき薬売りの跳梁跋扈、賭博中毒、劇場化していた精神病院などです。人間は等しくみな「色(性欲)」と「欲(金銭欲)」と「エゴイズム」に支配されているという醜悪な現実を世界に向かってぶちまけたのが、イギリスが生んだ稀代の絵師ホガースでした。本書は、ホガースの多彩をきわめる図像を多角的な視点から見つめなおし、斬新な「読み」を提供しています。
※ A 5版、258ページ、本体価格 1,210円(税込) 2023年3月15日より発売。
漫画にかぎらず、図像全般に興味を持っている読者に向けて、知的昂奮を呼びさますようなホガースの版画をお見せし、図像を読み解くことの悦びを共有したいと思います。そして、ホガースの版画への人々の興味を高め、日本におけるホガース・ルネサンス(ホガースの再興)の礎となりたいと考えています。