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日独国際共同研究プログラムで開発した「近赤外有機EL素子」をドイツ・ミュンヘンで行われる国際展示会 LOPEC2024に出展

掲載日:2024.03.05

本件のポイント

● 山形大学は、実用レベルの発光効率と寿命を実現可能な近赤外有機EL素子の開発に成功しました。今回、近赤外有機EL素子の試作品を、ドイツ・ミュンヘンで行われるLOPEC2024国際見本市にて実演展示します。伊藤電子工業(株)が駆動回路の開発を担当しています。
● 本開発成果は、JST SICORPプログラムの支援を受け、日独間での国際共同研究(2+2)で得られたものです。
● 近赤外有機EL素子は、センサーや小型近赤外分光器用の光源など、新たな応用領域をひらく発光デバイスです。

概要

 2024年3月5日~3月7日にドイツ・ミュンヘン見本市会場(メッセ・ミュンヘン)で行われる、LOPEC 2024国際見本市において、「近赤外有機EL素子」の開発試作品を展示します。これは、山形大学と伊藤電子工業(株) (本社:山形県寒河江市)が、国立研究開発法人科学技術振興機構・戦略的国際共同研究プログラム(JST SICORP)の支援を受け、2020年10月から2024年3月まで日独間で進めてきた国際共同研究による開発成果です(2+2;日本側の共同研究パートナーは、山形大学と伊藤電子工業(株)の2者、ドイツ側は、ドレスデン工科大学(TUD)とゼノリクス(Senorics)社の2者)。本国際共同研究では、日本側は、有機近赤外発光光源(近赤外有機EL素子)の開発、ドイツ側は、近赤外分光センサーの開発を担当、最終的に双方の技術を組み合わせた、小型近赤外分光測定システムの実現を目指しています。今回の展示は主に、日本側のチームの開発成果に関するものです。
 LOPEC国際見本市は、有機及び印刷・フレキシブルエレクトロニクス分野における、世界最大級の国際展示会です。今回、山形大学と連携関係にあるザクセン州有機エレクトロニクス協議会(OES)の協力の下、OESパビリオンの共同展示者として山形大学の展示ブースを確保しました。現地では近赤外有機EL素子の実物を展示し、近赤外発光の動作デモを行います。駆動回路やデモに関するシステム開発は、伊藤電子工業(株)が担当しました。ドイツ側チームとの共同実験評価を可能とするため、山形大学が試作した近赤外有機EL素子の特性に合わせて電流値可変の定電流駆動回路を設計し、近赤外有機EL素子と同じ外形サイズの回路基板上に作りこみました。
 今回の国際見本市では、これまで実用化されていなかった近赤外有機EL素子が、材料技術面では実用化が可能なレベルに達したことを実機を交えてアピールし、実用化の加速や、さらなる応用領域の開拓につなげることを狙いとして、展示説明を行います。

 詳しくはこちらをご覧ください。

LOPEC2024国際見本市について

LOPEC 2024   URL: www.lopec.com
International Exhibition and Conference for Flexible, Organic and Printed Electronics
(オーガニック&プリント・エレクトロニクス産業国際見本市)

開催日程:2024年3月5日(火)~7日(木)(見本市:3/6-7、会議:3/5-7)
開催場所:ドイツ・ミュンヘン見本市会場(メッセ・ミュンヘン)
主催:Messe Munchen GmbH ― メッセ・ミュンヘン www.messe-muenchen.de
   OE-A (オーガニック・プリンテッド・エレクトロニクス協会)
専門分野:有機・印刷・フレキシブルエレクトロニクス
開催周期:毎年(初回2009年)

近赤外有機EL素子について

 今回開発した「近赤外有機EL素子」は、700 nm以上の近赤外領域で光る有機EL素子です。これまで発光効率や寿命等の関係で実用化には至っておりませんでした。しかし、今回の山形大学の研究グループ(城戸淳二教授、佐野健志教授、笹部久宏准教授、奥山豊プロジェクト研究員、花山貴則(山形大学大学院有機材料システム研究科大学院生)ら)の開発により、発光ピーク波長769 nm、最大外部量子効率10%、大電流密度での加速条件下で4800時間以上の寿命(一般的な使用条件に換算して10万時間以上の寿命に相当)を実現し、実用レベルの性能を得ることに成功しました。従来、同様の近赤外波長領域では、外部量子効率10%を超えた研究報告例がわずか2~3報しかなく、信頼性に関して1000時間以上の実時間で寿命試験を行い報告した例は他にありませんでした。
 応用面では、「近赤外有機EL素子」は、センサーや近赤外分光器用など、新たな用途をひらく発光デバイスです。小型化が可能なため、従来、近赤外分光器において使用されてきたハロゲンランプを将来的にこれに置き換えることができれば、測定機器の大幅な小型化が期待できます。また無機材料を用いたLEDと比べても、薄型化や、フレキシブル化が可能です。現状、ハロゲンランプと比べて、カバーできる波長領域が狭い(700 nm~900 nm)ことが課題ですが、今後材料開発が進み1000 nm以上で安定的な発光が実現できれば、成分分析などの用途にも利用できることが期待されます。
 なお、今回の開発の経緯や技術詳細については、JST News 2024年2月号の特集記事でも紹介しています。

JST SICORPプログラムについて

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的国際共同研究プログラム(SICORP) 
日本-ドイツ国際産学連携共同研究「オプティクス・フォトニクス」第2期
期間:2020年10月~2024年3月(城戸課題)
研究課題名:小型全有機近赤外発光・分光センサシステムの開発
日本側研究代表者(学)
  城戸 淳二 山形大学大学院有機材料システム研究科、卓越研究教授
        山形大学有機材料システムフロンティアセンター、センター長
  研究参加者:佐野健志(有機エレクトロニクスイノベーションセンター長、教授)
        笹部久宏(大学院有機材料システム研究科 准教授)、奥山豊、花山貴則ほか
日本側研究代表者(産)
  伊藤 圭一 伊藤電子工業株式会社 代表取締役社長(プログラム開始~2020年12月)
  武田 恵助 伊藤電子工業株式会社 (2020年12月~2024年3月)
ドイツ側研究代表者(学)
  Prof. Karl LEO、ドレスデン工科大学、ドレスデン応用物理・フォトニック材料総合センター長、教授
ドイツ側参画機関(産):ゼノリクス (Senorics GmbH)
ドイツ側配分機関:ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
ドイツ側コーディネート機関:ザクセン州有機エレクトロニクス協議会(Organic Electronics Saxony: OES)

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