ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2024年06月 > 学長定例記者会見を開催しました(6/6) > 山形県コホート研究による研究成果の報告について

山形県コホート研究による研究成果の報告について

掲載日:2024.06.06

本件のポイント

 長年医学部で行ってきたコホート研究により、人々の健康には「からだ」だけではなく、「こころ」と「人とのつながり」も大切であることが分かってきました。これらは、近年「Well-Being」という概念で示されているものです。 
 Well-Beingの実現には、医学だけではなく、多方面からのアプローチが必要です。
 山形大学Well-Being研究所では、総合大学の強みを生かし、多様な専門分野の研究者によってWell-Beingをテーマとした研究を日々行っております。
 このたび、山形県コホート研究による研究成果について、2件発表いたします。
※「健康」とは、「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(Well-Being)にあること※世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)より」

 詳しくはこちらをご覧ください。

1.山形県コホート研究による、終末期に過ごしたい場所を“自宅”と望む関連因子についての研究が国際医学雑誌に掲載されました。

本件のポイント

  • 地域住民が終末期に過ごしたい場所を“自宅”と望む割合は61.1%、家族と話し合っている割合は35.1%。“自宅”の希望には、男性、後期高齢者、介護が必要な人と同居していない、現在幸せ、などの因子が関連

概要

 本論文は、日本における超高齢化・多死社会において課題となっている、終末期に過ごしたい場所とその関連因子について調査しました。対象は、2021年12月から2022年3月の間に「健康と生活に関する調査」の質問票に回答した山形県地域住民10,119人です。解析の結果、全対象者のうち61.1%が終末期に過ごしたい場所を”自宅“と回答し、終末期に過ごしたい場所について家族と話し合っている割合は35.1%でした。終末期に過ごしたい場所を“自宅”と望む関連因子は、男性、後期高齢者、介護が必要な方と同居していない、終末期の話し合いをしていない、現在幸せである、不安や抑うつを感じていない、現在の収入では生活が苦しい、現在の居住地が祖父母の出生地と同じであることでした。自由記載内容からは、家族への配慮などを含め個々の背景を踏まえて終末期に過ごしたい場所を話し合うことの重要性が示されました。山形県における自宅での死亡数の割合は14.4%であり、地域住民が終末期に過ごしたい場所と実際に過ごす場所とのギャップを埋めるための支援やシステムが必要と考えられました。

【論文タイトル】Factors associated with community residents' preference for living at home at the end of life: The Yamagata Cohort Survey
【論文著者】Saito Tomoko1, Konta Tsuneo2, Kudo Sachiko1, Ueno Yoshiyuki3
【所属】1山形大学医学部附属病院看護部、2山形大学公衆衛生学・衛生学講座、3山形大学内科学第二講座
【雑誌名】Global Health & Medicine. 2024 Feb 29;6(1):70-76. doi: 10.35772/ghm.2023.01072.

2.山形県コホート研究による、不眠症状の関連因子についての研究が国際医学雑誌に掲載されました。

本件のポイント

  • 不眠症状は、身体的因子、心理学的因子、環境因子が独立して関連

概要

 本論文は、健康状態に大きく影響する不眠症状の頻度とその関連因子を調査しました。対象は、2021年12月から2022年3月の間に「健康と生活に関する調査」の質問票に回答した山形県地域住民7,873人です。解析の結果、全対象者のうち23.4%が不眠症状を有していました。不眠症状と関連する因子は、高齢、女性、少ない収入、痛みや不快感、不安、幸福感の欠如、夜間頻尿、入浴から就寝までの時間が長い、寝室の照明がついている、歩行時間が短い、などでした。サブグループ解析では、男性では歩行時間、女性では肥満、高齢者では入浴から就寝までの時間、1日の歩行時間などが、より強く不眠と関連していました。これらの結果から、不眠症状は地域住民によくみられ、身体的因子、心理学的因子、環境因子が独立して関連していました。不眠症状の改善には、個人の状況に合わせた適切な支援が必要と考えられました。

【論文タイトル】Insomnia symptoms and related factors in a community-based population: The Yamagata Cohort study.
【論文著者】Suzuki Miho1,2, Suzuki Natsuko1, Sakurada Kaori3, Tsuchiya Norihiko4, Ueno Yoshiyuki5,Konta Tsuneo1.
【所属】1山形大学公衆衛生学・衛生学講座、2山形県立米沢栄養大学、3山形大学基礎看護学講座、4山形大学腎泌尿器外科学講座、5山形大学内科学第二(消化器内科学)講座
【雑誌名】Heliyon. 2024 Mar 15;10(6):e28228.  doi: 10.1016/j.heliyon.2024.e28228.

関連リンク

  • シェア
  • 送る

イベント一覧へ