ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2024年10月 > 学長定例記者会見を開催しました(10/3) > サスティナブル社会実現のための新規テキスタイル開発への挑戦 ~成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)での開発~
掲載日:2024.10.03
米沢市の東北整練株式会社を中心に、本学が連携機関となり、山形県工業技術センター、(公財)やまがた産業支援機構で申請しました令和6年度「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」に経済産業省より採択されました。テーマは「サスティナブル社会実現のためのCNFによるテキスタイル改質技術開発」です。東北整練株式会社が開発した、新規技術であるCNFを使った繊維製品の補強技術を用いて、SDGsの実現に向けて自然素材を原料とした繊維製品への置き換えを目指した研究を行います。特に山形大学では、工学部の松葉教授が中心となり大型放射光施設であるNanoTerasu(宮城県仙台市)やSPring-8(兵庫県佐用町)を利用した研究開発を進め、CNFを使った繊維製品の補強技術のさらなる発展を目指します。
詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。
繊維産業の二酸化炭素排出量は世界の総排出量の6%を占めると言われています。二酸化炭素の排出を削減し持続可能な社会(SDGs)を達成するには、リサイクルやリユースなどを進めていく一方で繊維生産量の70%を占める石油を由来とする化学繊維の削減も進める必要があります。ただ、繊維製品である衣服は実用品であるとともに嗜好品である側面を持っているため、単純にサスティナブルであるだけでは、石油製品からの置き換えは難しく、サスティナブルであることに加えて、消費者が満足し、着心地が良くて、既存の衣服と同等(以上)の性能を持って、リーズナブルな製品を供給する必要があります。
東北整練株式会社で開発されたCNFを用いた繊維加工技術を使って作製された再生セルロースからなる布は、既存の布に比べて防縮性や濡れたときの破れにくさなどが向上していますが、濡れたときの色移りが化学繊維に比べてまだ改善の余地があります。これまでの予備研究で繊維の周りをCNFがくるんでいるということがわかっていますが、なぜくるまれるのか、どのようにすればより効率的にくるむことができるのかが明らかになっていません。そこで、山形大学(松葉教授)が有する精密構造解析技術を利用して、CNFと繊維の間に働く相互作用を明らかにして、くるまれるプロセスを明らかにします。その中で、この度、宮城県仙台市の東北大学にできたNanoTerasu(ナノテラス)や大型放射光施設のSPring-8(スプリングエイト、兵庫県佐用町)を使います。
山形県の産官学が連携して、全く新しい繊維材料の開発を行います。サスティナブルであり、しかも、消費者が満足し、着心地が良くて、既存の衣服と同等(以上)の性能を持って、リーズナブルな製品を山形発の衣服として売り出すことで地域貢献を達成することが期待されます。
1.テキスタイル:布製品や織物などいわゆる布からできているものを表しています。
2.セルロースナノファイバー(CNF):植物の細胞壁の主成分であるセルロースをナノレベルまで微細に
解きほぐしたもの。鋼鉄の 1/5 の軽さで、鋼鉄の 5 倍以上の強度を有している。
3.NanoTerasu(ナノテラス):宮城県仙台市の東北大学青葉山新キャンパスに2024年4月に竣工した新しい大型放射光施設。非常に強くて感度の高いX線などのビームを使って、物質の内部や分子・原子などを精密に調べることができる。
4.SPring-8(スプリングエイト):兵庫県佐用町にある大型放射光施設。世界で最強クラスのX線を使って材料の構造や内部を調べることができる。