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JAXAと医学部東日本重粒子センターが共同研究開始 ~アルテミス計画の有人宇宙船に搭載する宇宙放射線測定器の研究開発~

掲載日:2025.02.06

本件のポイント

  • NASAが主導し、JAXAも参加するアルテミス計画において、⽉周回軌道に建設される有⼈⽉周回拠点ゲートウェイに搭載する宇宙放射線測定器開発を、JAXAと⼭形⼤学医学部東⽇本重粒⼦センターの共同研究で実施。
  • 重粒⼦線治療装置で⽣成する⾼エネルギーの炭素線で宇宙放射線を模擬し、宇宙放射線測定器開発に利⽤する。
  • 開発された放射線測定器により⽉近傍の宇宙放射線環境の理解が進み、被ばく管理⼿法や放射線防護対策など宇宙⾶⾏⼠の安全性向上に貢献する

https://nasa3d.arc.nasa.gov/detail/gatewayの画像
https://nasa3d.arc.nasa.gov/detail/gateway

概要

アルテミス計画において、⽉周回軌道に建設される有⼈⽉周回拠点ゲートウェイに搭載する宇宙放射線測定器開発を、JAXA と⼭形⼤学医学部東⽇本重粒⼦センターの共同研究で実施します。重粒⼦線治療装置で⽣成する⾼エネルギーの炭素線で宇宙放射線を模擬し、JAXA を中⼼に開発する3種類の宇宙放射線測定器開発に利⽤します。開発された放射線測定器により⽉近傍の宇宙放射線環境の理解が進み、被ばく量の導出だけではなく、⽉⾯構造物の遮蔽設計・防護対策や太陽⾼エネルギー粒⼦発⽣にかかる宇宙天気予測、今後の⽉周回・⽉⾯における新たな有⼈拠点(ハビテーション) 活動のための環境モニタリングに活⽤されます。

詳しくは、こちら(リリースペーパー)をご覧ください。

背景

アルテミス計画とは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導し世界各国が参加する、⽉への有⼈探査ミッションのことです。アポロ計画以来、約半世紀ぶりに⼈類を⽉⾯に送り込み、持続可能な⽉⾯探査を確⽴することを⽬指しています。我が国も宇宙航空研究開発機構(JAXA)が参加し、⽇本⼈初の2 名の⽉⾯着陸が予定されています。この計画において、宇宙⾶⾏⼠を⽉⾯に着陸するための拠点として⽉を周回する有⼈拠点ゲートウェイの建設が計画されています。⽉周回軌道や⽉⾯探査活動のための宇宙放射線環境計測は、被ばくや放射線影響の低減、放射線防護技術・遮蔽設計に直結する、極めて重要なキー技術です。JAXA と共同研究開発チームでは、有⼈⽉周回拠点ゲートウェイに搭載する宇宙放射線測定器として、さまざまな物理量を測定することができる3種類の放射線検出器の開発に取り組んでいます。
■超⼩型能動型線量計D-Space
■位置有感⽣体等価⽐例計数箱 PS-TEPC (Position Sensitive Tissue Equivalent Proportional Chamber)
■⽉探査機搭載⽤チェレンコフ検出器 Lunar-RICheS (Ring Imaging Cherenkov Spectrometer)
各機器の要素研究の評価・実証試験には、宇宙放射線環境を模擬した荷電粒⼦による照射試験が必須となります。

超小型能動型線量計D-Spaceの画像
超小型能動型線量計D-Space

 PS-TEPC(ISS搭載機)
の画像
PS-TEPC(ISS搭載機)

Lunar-RICheS(センサ部外観イメージ) 
の画像
Lunar-RICheS(センサ部外観イメージ) 

研究内容

宇宙では地上にはほとんど到達しない、幅広いエネルギー範囲を持つ⾼エネルギー荷電粒⼦が⾶び交っています。⼭形⼤学医学部東⽇本重粒⼦センターでは、広いエネルギー範囲の炭素線をシンクロトロン加速器により発⽣させることができ、宇宙放射線環境を模擬することができます。JAXA(代表研究者:宇宙探査イノベーションハブ 永松愛⼦参事)と⼭形⼤学(主たる研究担当者: 東⽇本重粒⼦センター⻑ 岩井岳夫)は、令和6年12⽉25⽇付で共同研究契約を締結し、重粒⼦線治療装置で⽣成する⾼エネルギーの炭素線を、有⼈⽉周回拠点ゲートウェイに搭載する宇宙放射線測定器開発に利⽤する研究協⼒を開始いたします。研究チームは本学と、JAXA、理化学研究所、⾼エネルギー加速器研究機構、東京理科⼤学、慶應義塾⼤学のメンバーで構成されます。

用語解説

1.アルテミス計画:NASA が提案し⽇本も参加する⽉⾯探査プログラム。2027 年以降に⽉⾯に⼈類を送り、その後、ゲートウェイ(⽉周回有⼈拠点)計画などを通じて、⽉に物資を運び、⽉⾯拠点を建設、⽉での⼈類の持続的な活動をめざす。⽇本⼈初の⽉⾯着陸が予定されている。
2.宇宙放射線:宇宙空間を⾶び交う放射線の総称。地上には届かないような⾼エネルギー荷電粒⼦が含まれる。
3.ゲートウェイ:アルテミス計画において、持続的な⽉⾯探査に向けた中継基地として、⽉周回軌道上に構築される有⼈拠点。
4.能動型線量計:放射線の量をリアルタイムで計測・表⽰できる線量計
5.⽣体等価⽐例計数箱:⽣体組織に等価な壁材およびガスを⽤いた放射線計測器
6.チェレンコフ検出器:媒質中を荷電粒⼦が光速を超えて⾛ることで発⽣するチェレンコフ光を検出し、荷電粒⼦のエネルギーを測定する装置
7.ISS:国際宇宙ステーション

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