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宇宙探査機の太陽光反射性能に対するダスト付着の影響を解明 ~地上実験と理論計算によりラジエーターに付着したダストの影響を定量的に把握~

掲載日:2025.06.05

本件のポイント

  • 小惑星リュウグウへの2度目のタッチダウンで予想以上に大規模なダストが舞い上がり、そのダストが探査機のラジエーターに付着し、性能低下の懸念が生じました。
  • 山形大学の研究チームが模擬ダストをラジエーター表面に付着させ、分光反射率測定と解析を行い、太陽光反射性能の低下がダストによる反射率変化に起因することを明らかにしました。
  • 新たな評価指標を用いてダスト量と性能劣化の関係を定量化し、この知見が惑星探査機の熱設計やダスト耐性向上に役立つ技術基盤となることが期待されています。

概要

 はやぶさ2等の惑星探査機において、惑星サンプルを採取する方法として、惑星表面接近時に探査機から惑星表面に弾丸を発射し、その衝突によって舞い上がったサンプルを採取します(タッチダウン)。2019年7月11日(日本時間)、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに2度目のタッチダウンを行った際に、タッチダウンの様子を撮影しました。撮影された動画から、当初予想していたよりも大規模なダストの舞い上がりが確認され、舞い上がったダストが放熱面(ラジエーター)に付着し、性能に影響を与える可能性が懸念されました。ラジエーターは太陽光を反射すると同時に、探査機内部の熱を外の空間に熱放射する機能を担っています。
 山形大学大学院理工学研究科 機械システム工学専攻の江目宏樹教授、林崇雅氏(当時:学士課程)と海野嵩史氏(当時:修士課程)は、地上実験と可視光・近赤外分光測定、さらにふく射輸送理論解析を組み合わせ、放熱面に模擬ダストを付着させた際の太陽光反射性能への影響を詳細に評価しました。
 本研究では、異なる種類・濃度の模擬ダストを簡易ラジエーター表面に付着させ、分光反射率を測定しました。得られた結果をもとに、太陽光反射性能低下の主因がダストによる分光反射率の変化であることを明らかにしました。また、新たに提案した評価指標を用いることで、付着ダスト量と性能劣化の関係を定量的に捉えることにも成功しました。
 この成果は、今後の惑星探査機における熱設計や、ラジエーター表面のダスト耐性向上に資する知見を提供するものであり、過酷な宇宙環境下での長期運用を支える技術的基盤となることが期待されます。
 本研究成果は、2025年5月27日付で熱工学の実務的な問題解決に焦点を当てた国際専門誌 Case Studies in Thermal Engineering に掲載されました。

DOI:https://doi.org/10.1016/j.csite.2025.106296

詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。

用語解説

1.ダスト:天体の表面上に見られる岩石由来の粒子やかけら
2.月砂(レゴリス):月など大気のない固体天体の表面に存在するダスト堆積層
3.分光反射率:物体や材料が特定の波長の光に対してどれだけの割合の光を反射するかを示す指標

参考情報

本研究の先行研究の成果として、ダストがラジエーターの熱放射性能に与える影響については、2023年8月8日付で宇宙技術の専門誌 Acta Astronautica に掲載され(DOI:https://doi.org/10.1016/j.actaastro.2023.07.033)、2023年10月5日の学長定例記者会見にて報告しております。

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