ホーム > 大学紹介 > がっさん通信 > キャンパスから_15

キャンパスから

(No. 15:2022年10月10日)

異分野間連携・融合研究の促進に向けて

 

 学問がどんどん進行するにしたがい専門性が高まり、他の学問分野の人にとっては理解し難い事態になる。その典型的なものは専門用語(technical term)とか業界用語(jargon)と呼ばれるものであり、これが分からないと話はちんぷんかんぷんとなる。さらに、専門用語ばかりでなく、日常の言葉で話していても、特別のニュアンスが付与されている言葉の場合、これも他の分野の人は違和感を持つ状態になる。

 私は地球物理学の中でも海洋物理学を専門としているが、学位審査などで依頼されて地震学や火山学の分野の話を聞くこともあった。そこで知ったことは、特に地震学の分野では、「調和的」なる言葉を好んで使っていることである。「今回の研究で得たこの結論は、これまで得られている知見と調和的である」のように用いる。この分野では、英語でも「**** is in harmony with ****」なる表現で世界中の研究者が使っているという。さて、私の分野でこの表現を使ったらどうだろうか。私はこれまで講演でこの表現を聞いたこともないし、論文の中でこの表現を見たこともない。もし、論文にこの表現を使ったなら、そんな曖昧な(blurred)表現はしないで、もっと断定的に、どの程度合うのか合わないのか、数値を用いて表現しなさい、と査読者(reviewer)から指摘されるだろう。

 異分野間でのコミュニケーションは大変難しい。しかし、それでもお互いに交流し合うことで、言葉の壁は乗り越えられる。そして、異なる分野を専門とする研究者が共通の課題にアプローチできるのであれば、大変素晴らしいことである。互いの知識と、持っているスキルと、そしてそれらを活かす知恵を動員することで、課題解決の道のりは短く、かつその解答はより洗練されたものとなろう。実際、研究グループを構成する人たちの多様性が、よりよい成果を産み出すことが知られている。ジェンダー、人種・民族、出身の国などなど、多様な人たちが集まるグループの強さである。異なる学問分野の人からなる研究チームにも同じことが言える。このようなグループの研究は、異分野連携研究や異分野融合研究などと呼ばれている。近年、多くのところで異分野間での連携や融合した研究の優位性が示され、科学研究費補助金の大型研究などで、政策的にこれを推進するよう働きかけがなされてきた。

 さて、先月(9月)29日(木)午後、本学で初めて異分野の交流を狙った「山形大学異分野交流学会」が開催された。開催には本学本部研究部(10月から研究情報部)に実行委員会を作り、学内の研究者・学生をはじめ、学外の企業・市民の方へも参加を呼び掛けた。2部構成で、第1部が学内の卓越した研究グループである「YU-COE(S)」に認定されている7グループの発表、第2部は若手研究者を中心とした人たちによる30件のポスター発表である。参加者は学内研究者が多いように見受けられたが、先生に引率されたY高校の3人の生徒さんが熱心に講演を聞き、ポスターを見ていたのが、印象的であった。このようなイベントを機会に、本学内でも多くの異分野連携・融合研究が盛んになることに期待したい。