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令和6年3月卒業者・修了者向け学長メッセージ

 本日、学位記を授与された皆さん、卒業ならびに修了、誠におめでとうございます。すべての卒業生・修了生に、心よりお祝いを申し上げます。

 皆さんは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行のなかで大部分の大学生活を過ごされました。様々な活動が大きく制限される中での学習は容易ではなかったと思いますが、皆さんは困難に立ち向かい、新たな方法で学ぶスキルを身につけました。これは必ず、これからの仕事や生活において貴重な経験となるでしょう。

 コロナ禍は、大学教育を大きく変えるきっかけとなりました。山形大学では、学生の皆さんと教職員が協力し、オンラインやオンデマンドの新たな学びに挑戦して、授業の在り方を大きく変えました。この変革を担った皆さんの努力は、山形大学の歴史に長く記憶されるものです。そのことに、大きな誇りをもっていただきたいと思います。

 皆さんが多くの試練を乗り越えて、自分の目標に向かって努力を積み重ね、こうして卒業、修了を迎えられたことは本当に素晴らしいことです。私たち教職員一同は、皆さんのこれまでの努力を心から讃え、皆さんの新たな門出を応援します。

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まった当初、新型コロナウイルスは全く未知の恐怖でしたが、それに対する科学的知識が増えるにつれて恐れは薄れ、社会全体が前むきに動き出すようになりました。この数年間、私たちが経験したように、社会が大きな困難に直面したときには思い切った行動変容が必要です。人生100年と言われる時代を生きる皆さんは、これから歩む長い道のりのなかで、自分の求める生き方を追求するために、自分の行動を変えるチャンス、あるいは変えなければならない状況が何度か訪れるでしょう。そこで必要となるのは、未知の世界に踏み込む勇気をもたらす知識です。

 しかし、産業構造や自然環境が急速に変化する現代社会では、生きるために必要な知識や技能は次々と新しいものに置き換えられていきます。将来、皆さんが大きな困難を乗り越える行動を起こすときに、学校で学んだ知識だけでは対応できないかもしれません。そのために、皆さんには、山形大学を離れてからも、大学で身に付けた「学ぶ力」を使って、学び続けて、自分の可能性をさらに広げてほしいと願っています。

 もし、皆さんが新たなことを学びたいとおもったときは、ぜひ山形大学にも目を向けてください。山形大学は、社会で活躍する人たちに対して、様々な学びの場を提供しています。私たちはいつでも皆さんの新たな学びを支える力になります。

 ウクライナやパレスチナではいまだに戦闘が続き、国家や地域間の対立や分断も深まっています。それらは私たちの日々の生活と無関係ではありません。皆さんは、これから新しい生活がはじまり、しばらくは自分のことで精一杯になるかもしれませんが、そのなかでも、日本の社会、そして世界で何が起こっているのか、常に関心を持ってください。そしてそれが自分にとってどのような意味をもつのか、考えてください。

 考えるということは、世の中の常識や既成の概念を疑うことでもあります。世の中に不確かな情報が溢れるなかで、何が正しいのかを判断することは一層難しくなりつつあります。しかし、多くの人が、自分で考えることをやめ、絶対的な権威や価値観に頼るようになると、その社会は衰退していきます。

 皆さんの長い人生のなかでは、社会全体が大きな選択を迫られる状況も来るかもしれません。そのような時代を生きる皆さんに、私が期待するのは、社会の大きな変化に対して受け身になるのではなく、常に、自分自身で社会が向かうべき未来を考え続けてほしいということです。

 長い人生のなかでは、たくさんの喜びがありますが、時には、苦境に陥り、なにもかも投げ出してしまいそうになることもあるかと思います。そのような時は、一人で抱え込まず、いろいろな人に相談してみてください。どのような激動の時代においても、社会は人のつながりで成り立っています。皆さんの力になってくれる人が必ずいます。母校となる山形大学も、同窓会と校友会を通じて、皆さんと繋がり続けています。皆さんが充実した人生を過ごすことを、これからも山形大学が応援します。

 ここで、皆さんにお願いがあります。この学位記授与式の機会に、これまで皆さんの大学生活を支えてくれた方々に、卒業・修了の報告と感謝の気持ちを伝えてください。皆さんが今日の日を迎えることができたのは、友人やご家族をはじめ、たくさんの方々の支えがあってのことです。また、コロナ禍や物価高などで経済状況が厳しいなかで、各学部同窓会をはじめ地域の方々から、皆さんの学生生活に対して様々なご支援をいただきました。皆さんの学業を支えてくれた多くの人々の思いに応えて、すべての卒業生・修了生の皆さんがそれぞれの場で活躍することを願っています。

 結びに、皆さんの未来が、自分らしく生きることができる社会、誰もが尊重される平和な世界となることを祈念し、私からの告辞といたします。

令和6年3月25日 山形大学長 玉手英利

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