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令和6年度 新入生に対する告辞

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、皆さんをこれまで支えてこられたご家族や関係者の皆さまにも、心からお祝いと感謝を申し上げます。山形大学の教職員と皆さんの先輩となる在学生一同は、皆さんを同じ学びの場に集う新たな仲間として、心から歓迎します。

 これから皆さんの学びの場となる山形大学についてお話しします。山形大学の起源は、いまから146年前の明治11年に開校した山形県師範学校まで遡ります。この年は、西南戦争が終わった翌年で、日本が明治維新の動乱期から近代的な国家へと歩み始めた時期でした。その後、明治から昭和の時代にかけて山形県内で設置された5つの高等教育機関を母体として、山形大学はいまから75年前、日本が第二次世界大戦の惨禍から復興を始めた昭和24年に開学しました。

 いまでは、山形大学は6学部、6研究科を擁する東日本有数の総合大学として大きく発展し、10万人を超える卒業生が社会の様々な場で活躍しています。そして、新たな時代の山形大学は、地域創生、次世代形成、多文化共生を使命とし、教育と研究、そして社会と共により良い未来を築く社会共創に取り組んでいます。

 いまお話ししたように、山形大学とその前身となった学校は、いずれも、世界が大きく揺れ動いた時期に創設されました。その時代に匹敵するような大きな変化がいま起こっています。急速に進む地球温暖化は農業や生態系に大きな影響を及ぼし、世界中で大規模な自然災害が多発しています。社会においては、人工知能(AI)、ロボットなどの先端技術によって、新たな職業や産業が生まれ、人口減少をはじめとする様々な社会課題が克服されると期待されています。一方で、世の中には不確かな情報が氾濫し、ウクライナやパレスチナをはじめ国家や人々の対立と分断が深まることで、私たちの社会は一層不安定になっています。

 このように予測困難で不確実な時代を生きる皆さんには、社会がどのように変化しても自分らしく生きる力を身に着けてほしいと願っています。大学生活でのさまざまな経験を通じて、価値観や信念を深め、それらを客観的な知識と結びつけることで、既存の考えや権威に頼るのではなく、自分が望む生き方を自分自身で決める力を養ってほしいと願っています。

 大学での学びは、単なる知識の獲得だけでなく、自己の発見と成長の場でもあります。その意味において、大学は皆さんにとって社会に出るための通過点ではありません。大学で何年間か勉強したあとで、社会に出て活躍する、という考え方は過去のものとなっています。18歳を過ぎて、皆さんは社会的にも独立した個人として行動することが認められています。自分がやりたいと思うことを、大学卒業まで待つ必要はありません。自分が思い描く夢を実現するために、失敗を恐れず、勇気をもって自分がやりたいことに挑戦してください。

 そのために、山形大学では皆さんが新しいことに挑戦する様々な機会を設けています。一例をあげれば、今年も実施する学生チャレンジプロジェクトでは、「地域を元気にする」、「大学を楽しくする」、「自分たちの夢をかなえる」という3つのテーマで学生が企画したプロジェクトに資金を配分して、その活動を応援しています。皆さんからも多くの応募があることを期待しています。このプロジェクト以外でも、大学の授業をきっかけとして地域活性化の活動に取り組み、総務省の「ふるさとづくり大賞」を受賞したサークルや、研究室での活動から新たなビジネスプランを提案して、研究資金を自分で獲得した学生など、自分の夢の実現に向けて生き生きと活動している先輩がいます。皆さんの人生のなかで、大学時代は多くの時間を自分の思う通りに使える貴重な時期です。二度とないこの時間を大切にして、これまで興味を持っていなかったこと、別の世界だと思っていたことにも積極的に挑戦して、自分の可能性を大きく広げてください。

 これから多くのことを経験する中で、時には自分一人では解決できないことや、苦しいこと、つらいことに直面するかもしれません。しかし、大学の中で、皆さんは一人ではありません。必ず、自分の存在を気にかけてくれる他の人が傍らにいます。不安を感じた時、悩んだ時は、ためらわずに、私たち教職員やお友達に声をかけてください。私たちは皆さんとのつながりを何よりも大切に考え、皆さんの支えになりたいと思っています。皆さんが安心して大学生活を過ごせるように、山形大学の教職員一同、全力でサポートしていきます。

 皆さんが、山形大学で充実した日々を過ごされることを心より願い、私からの歓迎の言葉といたします。

 

令和6年4月3日 山形大学長 玉手英利

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