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令和5年10月入学者向け学長メッセージ

 このたび、山形大学大学院に入学された皆さん、誠におめでとうございます。山形大学の教職員一同および皆さんの先輩となる在学生一同は、皆さんの入学を心より歓迎いたします。

 皆さんは、いまだ解明されていない未知の領域に関する研究を進めるという高い志のもとで、大学院に入学されたことと思います。私も大学院に進学した時のことを思い出しますと、学部時代に研究した内容をさらに追究し、この分野で新たな知を見出したいという期待に胸がいっぱいになっていたことを思い出します。これから皆さんが研究を進めるなかでは、思うようにデータが出なかったり、自分が想定していたことと全く反対のことが先行研究で発表されていたりと、このまま進んでいいのか、悩む場面もあるかもしれません。その時は、どうか、いったん立ち止まり、様々な視点から物事や事象を見てください。熱心な時ほど一方向ばかりを見てしまうものですが、大学院での学びは、専門知識や技術の習得だけでなく、多角的なアプローチで課題にアプローチし、解決策を見つけるスキルを養う場でもあります。研究に没頭する大学院の時代は、人生のなかでも大きな喜びをもたらす時間となります。一方、研究が進まない時や就職活動で大きなストレスを感じる困難な時もあるかもしれません。そのような時は、自分一人で抱え込まずに、友人や、私たち教職員に相談してください。また、皆さんの悩みを解決する手助けとして、各キャンパスに相談窓口やカウンセラーを設けているので、何か困ったときはぜひ活用してください。私たちは皆さんとのつながりを何よりも大切に考え、皆さんの支えになりたいと思っています。

 いま、私たちを取り巻く世界は急速に変わりつつあります。温暖化による気候変動や新型コロナウイルスによるパンデミックは、我々の毎日の生活を大きく変えました。一方で、ウクライナ戦争による国家間対立は、当事者国以外でも社会的分断を引き起こしています。このような人類社会の存続に関わる問題に我々は正面から向き合い、研究を通じてよりよい社会の実現に貢献していかなければなりません。山形大学では、「持続可能な幸福社会」を将来ビジョンに掲げ、教育・研究・社会共創を通じてwell-being(幸福)の実現に貢献することを目指しています。well-beingは抽象的な概念ですが、そのなかには、社会的実現を図るうえで科学的にアプローチできる複数の構成要素があります。皆さんはこれから、それぞれの分野での最先端の研究課題に取り組みますが、その成果がどのようなwell-beingをもたらすのか、研究を行うなかで深く考察していただきたいと願っています。皆さんがもたらす新たな「知」によって、1つでも多くの社会的課題が解決されることを大いに期待しております。

 学部時代をコロナ禍の真っただ中で過ごし、本日入学を迎える方も多いと思います。友人やサークルの仲間との交流もたたれ、大学生活を謳歌できなかったと感じている方もいるのではないでしょうか。そのような方は、この大学院の時代に、同じ研究室の仲間や先輩、後輩、そして先生とのきずなを深めてください。学生時代のきずなは、一生のきずなにつながることもよくあります。そしてこの世の中は、必ずどこかで他人とつながっています。そのつながりをぜひ大切にしていただきたいと思います。

 大学院での生活は、学部時代の4年間から比べて短いものですが、研究に没頭する時間も長く、時が過ぎるのも早く感じられると思います。皆さんの長い人生の中でも、特に自分自身が求める学びに時間を費やすことができるのはそうあるものではありません。大学院という貴重な時期に、自分の興味や関心の幅を広げ、物事を突き詰めて考える真理追究の楽しさを実感し、一生を通じて学び続ける力を一層高めていただきたいと願っています。

 皆さんが、この山形大学で充実した日々を過ごし、1つでも多くのことを学ばれますことを心より願い、私からの歓迎の言葉といたします。

令和5年10月2日 山形大学長 玉手英利

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