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令和4年10月入学者向け学長メッセージ

このたび、山形大学大学院に入学されたみなさん、誠におめでとうございます。学長として、心から歓迎申し上げます。

新型コロナウイルスはこれまでにないほどの感染者を出しました。しかし、パンデミックが始まった2年前に比べると、現在、私たちは社会的な活動を大きく制限することなく日常生活を過ごしています。これは、世界中の研究者が、新型コロナウイルスという未知の病原体の実態解明に取り組み、それを克服する方法を生み出してきたからです。「研究」とは、未知なるものに正面から向き合い、社会の停滞や閉塞を打ち破る新たな「知」を生み出し、私たちに前に進む力をもたらす行為といえます。みなさんが、その最前線で活躍する仲間として山形大学に加わったことを、大変に頼もしく思い、大きな期待を寄せています。

いま、私たちの世界は、温暖化、パンデミック、ウクライナ戦争に代表される国家間の対立や社会的分断など、人類社会の存続にかかわる大きな課題に直面しています。さらに、日本の社会では人口減少のもとで地域社会の持続的発展をいかに実現するかが、待ったなしの課題となっています。それに対して、山形大学では、「持続可能な幸福社会」を将来ビジョンに掲げ、教育・研究・社会共創を通じてwell-being(幸福)の実現に貢献することを目指しています。well-beingは抽象的な概念ですが、そのなかには、社会的実現を図るうえで科学的にアプローチできる複数の構成要素があります。みなさんがこれから行う研究では、自分が取り組む新たな「知」が社会にもたらされたときにどのようなwell-beingにつながるのかについて、考察を深めていただきたいと願っています。

大学院の研究テーマは、どのような内容であっても、新型コロナウイルスのように、答えがまだ出ていない研究課題です。みなさんは、研究を進めるなかで、世界中の誰も見たことがない現象や誰も知らない事象に出会うという、心が躍る瞬間を経験すると思います。一方で、何度も実験や調査を重ねても期待する結果が出ず、挫けそうになることもあるかもしれせん。しかし、思ったとおりの結果にならなかったとしても、それは「失敗」ではありません。むしろ、それは研究対象により迫るために必要な「意味のある結果」です。セレンディピティ(serendipity)という言葉があるように、研究では予期しない結果が大きなブレークスルーをもたらすことがあります。みなさんも「成功」や「失敗」という言葉に囚われず、実験や調査の結果を丁寧に記録し、それについて徹底的に考えてください。研究の最前線で活躍するみなさんには、予想もしない新たな「知」を見いだすチャンスが必ずあります。そのことを心に留めて、粘り強く日々の研究に取り組んでください。

大学院での生活は、学部時代の4年間から比べて短いものですが、それ以上に時が過ぎるのも早く感じられると思います。しかし、みなさんの長い人生の中でも、特に自分自身の求める学びに没頭できる大学院という貴重な時期に、自分の興味や関心の幅を広げ、物事を突き詰めて考える「主体的な学び」の楽しさを実感し、一生を通じて学び続ける力を一層高めていただきたいと願っています。大学院という稠密な学びのなかで、研究が進まない時や就職活動において大きなストレスを感じることもあるかもしれません。そのようなときは、自分一人で抱え込まずに、友人や、私たち教職員に相談してください。また、みなさんの悩みを解決する手助けとして、各キャンパスに相談窓口やカウンセラーを設けているので、何か困ったときはぜひ活用してください。私たちはみなさんとのつながりを何よりも大切に考え、みなさんの支えになりたいと思っています。

みなさんが、この山形大学で充実した日々を過ごし、1つでも多くのことを学ばれますことを心より願い、私からの歓迎の言葉といたします。

令和4年10月1日 山形大学長 玉手英利