ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2019年01月 > ミトコンドリアのクリステを作る仕組みの一端を解明~クリステ形成におけるリン脂質輸送の重要性を発見~

ミトコンドリアのクリステを作る仕組みの一端を解明~クリステ形成におけるリン脂質輸送の重要性を発見~

掲載日:2019.01.16

山 形 大 学
京都産業大学

研究成果のポイント

  • ミトコンドリア(※1)の外膜・内膜間における脂質輸送が,ミトコンドリアの「クリステ」(※2)を形成するために重要であることを世界で初めて実験的に明らかにした。
  • ミトコンドリアのクリステが形成できなくなると,ミトコンドリアの機能に重要なリン脂質「カルジオリピン」(※3)が激減することを明らかにした。
  • ミトコンドリアの機能低下によって引き起こされる疾患の治療法開発への応用が期待される。

研究成果の概要

私たちが生きていくために必要なエネルギーの多くは,細胞の中にある「ミトコンドリア」と呼ばれる細胞小器官(※4)で作られます。ミトコンドリアは外膜,内膜とよばれる二枚の脂質膜で囲まれた構造を持ち,エネルギー生産を担う酵素群は内膜に存在することがわかっています。ミトコンドリアの内膜は,ミトコンドリアの内側に「クリステ」と呼ばれるチューブ状や層状の膜構造を作ることでその表面積を増加させ,自身のエネルギー生産効率を最大化しています。この特徴的なクリステ膜構造がミトコンドリア内にあることは古くから知られていましたが,このような複雑な膜構造が作られる仕組みはほとんどわかっていませんでした。

山形大学(学長:小山清人)の田村康准教授、米国ジョンズホプキンス大学(学長:ロナルド・J・ダニエルズ)の瀬崎博美教授,京都産業大学(学長:大城光正)の遠藤斗志也教授らの研究グループは,出芽酵母をモデル生物として用いた遺伝学や生化学的研究手法を駆使して,ミトコンドリアの外膜,内膜間における脂質輸送が,チューブ状のクリステ構造の形成に重要な役割を果たすことを世界で初めて示しました。また,ミトコンドリアのクリステ構造が作れなくなると,ミトコンドリアに特異的に存在するリン脂質,カルジオリピンが著しく減少することも明らかにしました。今後,ミトコンドリアの機能低下や,カルジオリピンの減少によって引き起こされる疾患の治療法開発への応用が期待されます。

本研究の成果は2019年1月15日(現地時間)付の米国科学誌Cell Reportsにオンライン掲載されます。

詳しくは、こちらの資料をご覧ください。 

用語解説

  • ミトコンドリア:真核細胞内に発達した膜構造(細胞小器官(※4))の一つで,主に生命活動に必須のエネルギーを生産する他,リン脂質,アミノ酸などの合成にも関与する。
  • クリステ:ミトコンドリアの内膜のうち,内側に貫入したチューブ状もしくは層状の膜構造。エネルギーを生産するためのタンパク質群が存在するため,表面積を増加させることでエネルギー生産の効率を上げている。
  • カルジオリピン:ミトコンドリアで合成され,主にミトコンドリア内膜に存在するリン脂質。他のリン脂質とは異なり二量体の構造を持ち,ミトコンドリアのエネルギー生産に必須の役割を持つ。
  • 細胞小器官:核,小胞体,ミトコンドリア,液胞,葉緑体などに代表される真核細胞内に発達した膜構造の総称でオルガネラとも呼ばれる。エネルギー生産や,タンパク質合成,タンパク質分解,光合成などを行うオルガネラが存在する。

 

関連リンク

  • シェア
  • 送る

プレスリリース一覧へ