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タンパク質の細胞内輸送の校正システムを発見

掲載日:2019.08.22

京都産業大学
名古屋市立大学
山形大学
熊本大学

発表論文

「Msp1 clears mistargeted proteins by facilitating their transfer from mitochondria to the ER」
(Msp1は誤配送されたタンパク質をミトコンドリアからERに移動させて除去する)

著者1筆頭著者,2責任著者)

松本俊介1,遠藤斗志也2,角田千香(京都産業大学)、中務邦雄(名古屋市立大学)、田村康(山形大学)、江崎雅俊(熊本大学)

背景と概要

ヒトや酵母などの真核生物の細胞内には,ミトコンドリアや核,小胞体をはじめとする,膜で仕切られた細胞内小器官(オルガネラ)構造がつくられ,細胞に課せられた複雑な機能を分散管理しています。一方,細胞内でつくられる数万種類のタンパク質は,それぞれ働く場所が決まっており,サイトゾル,ミトコンドリア,核,小胞体(そこから細胞外)等,そのタンパク質が働くべき場所に運ばれることが,正常な細胞機能には不可欠です。数万種類におよぶタンパク質は,各々がどのようにして目的地を見出し,目的地に配送されるのか。このタンパク質配送の原理は,宅配便のシステムになぞらえることができます。すなわち,タンパク質自身には働くべき場所が宛名として書き込まれており,細胞内にはそれを読み取って目的地への配送を行うシステム(注1)が備わっていることが分かってきています。タンパク質の目的地への配送はきわめて正確に行われ,その配送が狂うと細胞機能は損なわれ,様々な病気につながるものと考えられてきました。

今回私たちは,タンパク質の細胞内配送には間違いが起こりうること,しかしいったん配送先を間違っても,配送をやり直す,すなわち校正を行うシステムが存在することをはじめて見出しました。生命活動の基本現象である,DNAの複製,DNAの情報に基づくタンパク質の合成などのプロセスについては,それらがきわめて重要であるが故に,たとえ間違いが生じてもそれを修正,校正する仕組みがあることがわかっています。今回タンパク質の配送という,やはり生命活動の基本的プロセスについても,そのやり直し,校正を行うシステムが発見されたことになります。これは生命の基本現象の理解を根本的に大きく前進させる発見です。

本研究の成果は、2019年8月22日(日本時間)、米国科学誌「Molecular Cell」に掲載されました。

詳しくはこちらの資料をご覧ください。

図1  Msp1による,ミトコンドリア外膜に誤配送されたタンパク質(Pex15Δ30)の配送やり直しと分解除去の画像
図1 Msp1による,ミトコンドリア外膜に誤配送されたタンパク質(Pex15Δ30)の配送やり直しと分解除去

図2  Msp1による,ミトコンドリア外膜に誤配送されたタンパク質(Gos1)の配送やり直しとゴルジ体への正常な配送の画像
図2 Msp1による,ミトコンドリア外膜に誤配送されたタンパク質(Gos1)の配送やり直しとゴルジ体への正常な配送

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