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学生のスタートアップチームが複数のピッチコンテストで受賞 ~“機能性野菜”に着目したビジネスプランに高い評価~

掲載日:2022.03.10

本件のポイント

  • 山形大学発の学生スタートアップチーム: q.(キュードット)が、複数のピッチコンテストで受賞。
  • 複数のピッチコンテストにおける学生のスタートアップチームの受賞は、山形大学で初めてとなる。
  • 本スタートアップチームの事業により、高い栄養価を有する機能性野菜の生産が可能となり、日本農業の再興が期待できる。

概要

 山形大学 大学院理工学研究科 増原陽人研究室 博士前期課程1年の大下直晃、木村汰勢、菊池圭祐の3名で構成されるスタートアップチーム: q. (キュードット)が、「Deep Tech Commercialization Pitch 2021」、「みちのくイノベーションキャンプ」、「NEDO Technology Commercialization Program(TCP) 2021」において、NEDO賞、最優秀賞、ファイナリスト賞をそれぞれ受賞しました。これらの受賞は、発表したビジネスプランが高く評価されたものであり、上記3つの賞を受賞した学生のスタートアップチームは、山形大学では初めてとなります。
 なお、今後は、本ビジネスプランで提案した機能性野菜の栽培に関する実証実験を山形大学農学部と共同で実施し、成功次第、学生主体の大学発ベンチャーを起業する予定です。

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ビジネスプランの概要

 高い栄養価を有する“機能性野菜”は、日常生活で不足した栄養素を補うことができるため、生活習慣病の予防に効果的であるといわれています。しかし、この機能性野菜は、人工光型植物工場内でLEDにより特定の色の光を照射する栽培法が主流であるため、設備・運営費など莫大なコストがかかり、一般農家の参入を阻む障壁となっていました。そこでq.は、一般農家の機能性野菜市場への新規参入を促進するため、太陽光に含まれる紫外線を特定の光に変換するペロブスカイト量子ドット(PeQDs)を用いた光変換フィルム(q.フィルム)による機能性野菜の栽培を可能にし、低コストでの機能性野菜栽培を実現します。例えば、トマトでは青紫色(波長 410 nm)の光を照射することでリコピン含有量が増加し、小松菜では緑色(波長 520 nm)の光を照射することでカルシウム吸収が促進されることなどが報告されています。野菜の栽培時にq.フィルムを設置し、太陽光がq.フィルムを透過する際に紫外線が特定の色の光へ変換され、この光が野菜に照射されることで栄養価が向上した機能性野菜の栽培が可能になります。
 q.フィルムの材料であるPeQDsは、①100%に近い光変換効率と②紫外線の変換色を非常に広い範囲(410 nm ~ 700 nm)で容易に制御可能、といったこれまでの光変換材料には無い特徴を有することから、q.は高い光変換効率を持ちながら、野菜に合わせて光の変換色をカスタマイズできる農業用フィルムへの応用を着想しました。メンバー3名が所属する本学工学部の増原陽人研究室では、PeQDsの大量合成手法を確立しており、この技術をもとに、山形大学発ベンチャー起業を立ち上げるため、様々なピッチコンテストへ臨んできました。ビジネスモデルでは、農業従事者へのヒアリングをもとに考案した初期投資の負担が0円となる「レベニューシェアモデル」や、q.フィルムの製造だけでなく、農業従事者が生産した機能性野菜を消費者に届けるまでを支援する構想を掲げ、審査員から高く評価されました。

今後の展望

 今後は機能性野菜栽培の実証を予定しております。更に、光の色が栄養価向上に与える影響を明らかにするため、山形大学農学部との共同研究も計画しており、q.フィルムの普及により、多くの農家に機能性野菜の栽培を可能にし、機能性野菜によって生活習慣病で苦しむ人々を減らすことを目標として活動していく予定です。

用語解説

  1. ピッチコンテスト:自社の事業計画や将来性を短時間で端的に述べ、投資家などから出資を募るイベント。
  2. ペロブスカイト量子ドット:ペロブスカイト構造(組成式:ABX3)を有する約10 nm程度のナノ結晶材料。
  3. レベニューシェア:契約者間で事業の収益を分配する成果報酬型の契約方法。
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