ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2022年03月 > 学長定例記者会見を開催しました(3/10) > 科研費・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))に東原知哉教授が 採択されました
掲載日:2022.03.10
東原知哉教授(有機材料システム研究科担当)の研究テーマ「半導体高分子の3次元トポロジー制御と自己修復化」が科研費・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))に採択された。本基金は、国際的に活躍できる独立した研究者の養成に資する事業を支援するのもので、科研費(「基盤研究(海外学術調査を除く)」又は「若手研究」)採択者が現在実施している研究計画について、国際共同研究を行うことでその研究計画を格段に発展させ、優れた研究成果をあげることを目的としたものである。
持続可能な開発目標(SDGs@国連総会2015)に向け、エネルギー・流通のカーボンニュートラル・スマート化が急務となっている。特に我が国では、超少子高齢化社会に向け、遠隔医療や遠隔診断のためのデジタル化・オンライン化を推進する必要がある。本研究では、上記技術の革新に資する「有機半導体の伸縮化と自己修復化」に焦点を当て、令和3年度科研費採択課題の「シーケンス制御ブロック共重合体群※3の創成と伸縮性有機薄膜トランジスタへの応用」(基盤研究B @2021.4~2024.3)に関する研究を発展させる。高分子合成化学を駆使した半導体高分子の精密合成技術を軸足とし、本事業ではさらに半導体高分子の3次元トポロジー制御と自己修復化まで拡張させることで、一般に二律背反する「半導体特性」と「伸縮性」を解消するための材料設計指針を明らかにし、高効率かつ伸縮応力に耐えうる新規有機トランジスタ材料群を創出する。
これまで共同研究実績のある米・スタンフォード大との国際共同研究により、高性能半導体高分子材料のストレッチャブルウェアラブル端末への実装を目指す。
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SDGsをはじめ、様々な形で持続可能な世界を実現する取り組みが始まっている。カーボンゼロエミッションを達成するには、流通や人と人とのコミュニケーションの自動化・オンライン化を急ぐ必要がある。特に我が国では、世界に先駆けた少子高齢化社会の到来により、限りある医療資源を最大限に活用するため、遠隔医療や遠隔診断のためのデジタル化・オンライン化は不可避である。中でもセンシング技術の革新は必須であり、センサー等端末の軽量・ウェアラブル化のニーズと市場は世界的に拡大(ウェアラブルデバイス世界市場・年率>14%@IDC調査 2020)している。
ウェアラブルデバイスの根幹材料である半導体材料は、結晶性が高く、硬くてもろいため、外から力が加わると、ヒビや割れが生じることが分かっていた。特に皮膚などに貼り付けて駆動するウェアラブルデバイスに応用するためには、最大100%の歪み(元の長さの2倍の変形)まで耐えられる半導体材料開発が必要とされるものの、ヒビや割れの完全解消まで難しい状況であった。高い半導体特性を狙うと、結晶性が高く、硬い材料が必要である一方、ヒビや割れの発生しない柔らかい高分子材料に置き換えると半導体特性が犠牲にされる、といったトレードオフが課題であった。
本研究では、半導体となる高分子材料を分子レベルから再設計することに着眼した。1次元的な半導体高分子の形状を分子レベルで3次元に拡張し、かつ自己修復機能を導入することで、どの方位から加わる力も均等に分散され、半導体特性と機械特性のトレードオフが解消されると期待される。具体的には、0.1 GPa以下の弾性率※4及び100%伸張下での電荷移動度※5>1cm2V-1s-1を達成目標値とする。
本目標が達成されれば、ウェアラブル端末機能改善につながる厳しい要求に対応した材料設計の国際的なプラットフォームになる。遠隔医療・遠隔診断に使用される生体センサー・健康モニタリング機能をもつ端末のみならず、新型コロナ禍でのリモートワーク、商品流通市場においてもウェアラブル端末の果たす役割は、今後大きくなると予想され、科学技術・産業へのインパクトやSDGsへの貢献度は大きい。