ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2025年03月 > ナスカの地上絵研究チームのコッツァレリ賞受賞によせて
掲載日:2025.03.12
このたび、坂井正人教授を中心とした研究チームがProceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) に掲載した論文、"AI-accelerated Nazca survey nearly doubles the number of known figurative geoglyphs and sheds light on their purpose "が、コッツァレリ賞(Cozzarelli Prize)を受賞することになりました。これは、坂井教授チームのナスカの地上絵に関する研究が、この一年間に世界中で行われたものの中で最も優れた研究のひとつとして、アメリカ科学アカデミーによって認められた、ということを意味します。こうした真に卓越した研究が、大学附属の研究所からうまれたことは、山形大学の誇りであり、喜びです。
今となっては信じがたいことかもしれませんが、世界を驚かせ続けているこのナスカの地上絵研究は、2004年、人文学部(現人文社会科学部)所属のたった4人の教員による、小さな共同研究として出発したものでした。もちろん、スタートアップ当初から巨大な成果を当て込んで大量のリソースを投入した、というわけではありません。研究チームは学術的な関心に忠実に従い、文理の垣根を超えた地道な研究を積み重ね、本研究を発展させていきました。
特定の実用的な応用を直接の目的とするのではなく、自然界や社会の原理・法則を解明することを目的とした研究を「基礎研究」と呼ぶならば、ナスカの地上絵の目的を明らかにした今回の論文は、まさしく基礎研究の成果にほかなりません。
現在、運輸交通や再生可能エネルギーなど、多くの分野で、科学技術が応用され、人類や社会の未来を左右する重要な役割を果たしています。その一方、基礎研究は、一見すると社会に即座に役立つものではないため、社会的な関心の対象となりにくく、経済的な支援を得にくいことがしばしばあります。しかし、様々な応用的な技術革新の背後に、長年にわたる地道な基礎研究の積み重ねがあることを忘れてはならない、と我々は考えます。
今回のコッツァレリ賞授与という嬉しいおどろきを、基礎研究の重要性に思いを馳せる機会にしていただけるならば、と祈念してやみません。
山形大学人文社会科学部長 森岡 卓司