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掲載日:2021.01.15
教授 富松 裕(植物生態学)
夏緑樹林(落葉広葉樹林)では、森林を構成する樹木よりも、ずっと多くの植物が林床で暮らしています。樹冠の下で暮らす植物にとって最大の難題は、光を得ることです。まだ雪が解けたばかりの早春に、樹木に先駆けて葉を広げるカタクリやニリンソウの生き方はよく知られていますが、ブナ林で密生するチシマザサの戦略はとてもユニークです。
私たちは、チシマザサが地下茎を数十メートルも伸ばして広がり、林内で光が差し込む隙間(ギャップ)をうまく利用しながら森林全体で密生するようになることを明らかにしました。一方で、多くの植物は、土壌からの栄養分の獲得を、根で共生する菌類に強く依存しています。地下では植物と菌類との複雑な相互作用が存在し、共生関係は植物の生涯を通じてダイナミックに変化しているようです。
森林が有する多面的機能は、多様な生物の共存によって支えられています。私たちは今後も、従来とは違う視点から、厳しい環境を生き抜く植物の生態に迫りたいと考えています。