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地域×データ:西洋ナシの収穫適期判断に悩む産地をデータ収集・共有アプリで支援

掲載日:2021.10.07

本件のポイント

  • 上山市で産地化が進むリーガルレッドコミスや希少品種の収穫適期の見定めには、生産者の経験/技術と経日/年的な果実データが必要である。
  • 生産者数が減少する産地において、各生産者が、計測した果実データをアップロードし、その場でグラフ化/共有できるアプリ機能を作成した。
  • 今年は、オーロラとリーガルレッドコミス栽培者にご協力いただき、データ収集法やアプリを果樹栽培支援システム「かるほく」(※1)で試験し、次年度の本運用を目指す。

概要

 山形大学学術研究院の奥野貴士准教授(生物物理学)は上山市と連携し、果実の収穫適期情報等を提供するシステム開発を行うほか、大学の知見を活かし、次世代の生産者育成も視野に入れた活動を展開している。
 上山市では、赤色の西洋ナシ(リーガルレッドコミス)の産地化や希少品種の栽培が行われている。西洋ナシの場合、特に収穫適期の判断は、果実の食味に大きく影響し、生産者の知識・技術が問われるポイントである。希少品種や新たな西洋ナシを導入するには、産地独自で収穫日の目安となるデータ収集が、高品質な果実栽培に必要である。そこで、果実の栽培管理のデータ収集方法に、市民科学の概念を取り入れ、各生産者が計測した果実データを、集約/共有できる機能を「かるほく」に試験的に実装した。今年は、オーロラとリーガルレッドコミス栽培者にデータ収集やアプリ試用にご協力をいただき、今シーズンの収穫適期の判断に利用いただいた。今後は、試験運用で明らかになった課題を解決し、次年度の「かるほく」での本運用を目指す。

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背景

 上山市は、棚仕立ての西洋ナシ産地であり、収穫前には、果実が整然と棚下にたわわに実り、上山が世界に誇れる秋の風景である。しかし、生産者数が減少し、子供たちが果樹栽培に夢を描ける社会作りが重要な課題である。生産者数が減少する中で、これまで培われてきた独自の棚仕立ての栽培技術の継承と発展が、持続的な社会(産地)作りに必要である。栽培管理に関する情報も、ネットで効率的に収集する時代だが、地域の風土にあった独自栽培方法/工夫は、ネット環境に載っていないことが多い。少ない生産者でも、協働的に地域の栽培管理に関する情報を既存の組織の垣根を超えて、集約/共有する新しい取り組みを、今から準備する必要があると考える。

研究手法・研究成果

 西洋ナシの栽培管理(特に収穫適期)に関する情報を、各生産者が組織の垣根を超えて持ち寄り/共有する仕組みは、栽培しやすい地域作りの一つの方策となる可能性がある。そこで、果実の栽培管理のデータ収集方法に、市民科学の概念を取り入れ、各生産者が計測した果実データを、集約/共有できる機能を「かるほく」に試験的に実装した。アプリ開発はフェイバーエンジニアリング社(鶴岡市)と共同で行なった。今年は、オーロラとリーガルレッドコミス栽培者にデータ収集方法を実践いただいたり、アプリを使ったデータのアップロードとグラフによるデータ可視化/共有にご協力をいただいた。そして、実際に今シーズンの収穫適期の判断に利用いただいた。

今後の展望

 今後は、試験運用で明らかになった課題を解決し、次年度の「かるほく」での本運用を目指す。また、STEM教育(※2)にも利用できる市民科学用の独自アプリを今年度内を目処にリリースする。

参考

株式会社フェイバーエンジニアリング(山形県鶴岡市)
<事業内容>組み込みソフトウェアを中心に電子機器システムの設計開発や新しいソフトウェアや画像処理関連のサービスを提供。

用語解説

  1. かるほく:上山市と山形大学の奥野貴士准教授が共同で開発したスマートフォン向けのアプリケーション。市内の園地数カ所に定点カメラを設置し、撮影した果実画像と気象などのデータを大学が解析し、より良い収穫のタイミングをグラフなどで伝えることで最適な収穫期がわかるほか、霜害アラート機能などにより、市内農家の良質な果物の生産をサポートする。
  2. STEM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の分野を統合的に学び、将来、科学技術の発展に寄与できる人材を育てることを目的とした教育プラン。

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