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注目の研究農学

野生種トマトにおける有用形質の探索

掲載日:2023.08.01

准教授 鍋島 朋之         

 私達が普段口にする作物の多くは、人類が長い時間をかけて改良を重ねて出来上がったものです。しかし、食味や収量、育てやすさなど、人間に好ましい形質をもつ植物が獲得される過程で、有用な形質が失われてしまうこともあります。
 最近の研究では、トマトの野生種は栽培種トマトよりも耐暑性や耐病性などが優れることがわかってきており、これらの有用形質を栽培種に再導入する試みもあります。私たちの研究室では、日長延長耐性の形質に注目しています。植物は光合成によって成長に必要なエネルギーを得ます。単純に考えると、日長が長くなればその分良く育つように思えますが、実際にはこのようにならないケースも多く、原因は様々ですが、特に栽培種トマトでは全日長障害と呼ばれる障害が顕著です。実は野生種トマトの多くではこのような障害は発生せず、全日長耐性は栽培化の過程で意図せず失ってしまった形質と考えられます。現代では、日長延長耐性があれば植物工場で効率的な生産が期待できますが、昔の人々が栽培種トマトを育種してきた過程では重要な形質とは認識されていなかったのでしょう。現在、私たちは日長延長耐性を付与する新規遺伝子の獲得が期待できる野生種系統を選抜しており、栽培種においてこの形質を「復活」させることを目指しています。また、耐病性などの他の有用形質の調査も進めていきたいと考えています。

人工光での日長試験の画像
人工光での日長試験

全日長で育成した栽培種トマト(左)と全日長耐性を持つ野生種トマト(右)
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全日長で育成した栽培種トマト(左)と全日長耐性を持つ野生種トマト(右)

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