ホーム > 研究 > 注目の研究 > 農学 > ゲノム情報から探るリグニン代謝の進化
掲載日:2025.07.01
私たちの研究室では、植物が生産する芳香族化合物、中でも芳香族系ポリマーであるリグニンを主な研究対象としています。リグニンは、植物の水分輸送と支持機能に不可欠な成分であり、植物が陸上へ進出し繁栄する上で重要な役割を果たしました。この根幹的な役割にもかかわらず、その構造は植物種間で大きく異なり、特にイネ科植物のリグニン構造は複雑です。リグニン構造の多様化は、イネ科植物の成長速度向上や生存域拡大に寄与していると考えられますが、その進化の分子機構の詳細は未だ解明されていません。そこで私たちは、イネ科植物と近縁の植物種のゲノム情報を活用し、生化学・分析化学系の実験を行うことで、リグニン構造多様化をもたらした進化の分子機構解明を目指しています。リグニンは、木質バイオマス資源の20〜30%を占めており、化石燃料に代わる芳香族系原材料の供給源として期待されています。また、イネ科植物はその成長性の速さから木質バイオマスの供給源として重要であるため、本研究でイネ科リグニンの構造多様性に関する知見を深めることは、将来的な木質バイオマス資源の利用促進にも繋がると考えています。
▲陸上植物の進化に伴うリグニン構造の変化
▲イネ科植物の進化研究に用いる植物種
▲遺伝子組換え植物を作って代謝を調べている様子