ホーム > 研究 > 注目の研究 > 生物学 > 植物の根が水を求めて伸びるために必須な細胞を発見
掲載日:2017.11.15
教授 宮沢 豊(植物生理学)
植物の主要な吸水器官である根は、土壌中の水分の多い方向を感知して、その方向へ屈曲伸長する能力(水分屈性)を有します。この水分屈性は、植物の効率的な養水分吸収に重要な役割をもっていると考えられ、その仕組みの理解と利用は、乾燥地が拡大しつつある地球環境における、希少な水の有効利用と植物生育域の維持に極めて重要です。これまでに宮沢教授のグループは、根の水分屈性に、植物ホルモンのアブシシン酸や陸上植物のみが有するMIZU-KUSSEI1 (MIZ1) 遺伝子のはたらきが必須であること、アブシシン酸がMIZ1遺伝子の発現を上昇させて水分屈性を促進することを明らかにしてきました。しかしながら、根のどの細胞が水分屈性に必須なのかは未解明でした。
それを明らかにするために、私たちはMIZ1の機能を欠損し、水分屈性を示さない突然変異体において、根の様々な細胞だけでMIZ1遺伝子を機能させる実験を行い、どの細胞でMIZ1が機能すれば、この変異体で異常になっている水分屈性が回復するかを調べました。その結果、根の皮層細胞でMIZ1を機能させたときのみで、水分屈性が回復しました。今回の発見は、重力屈性とは全く異なる、根の屈性を発現させる新しい仕組みの存在を明らかにしたことになります。水分屈性が他の屈性とは全く異なる屈曲の仕組みで生じることは、他の環境応答に干渉されない形で、植物の養水分獲得を効率化させる技術の開発につながると期待されます。なお、本研究成果は、東北大学、英国Nottingham大学等との共同研究によるものです。