ホーム > 研究 > 注目の研究 > 医歯薬学 > 野球肘の病態解明と運動器再生治療の基礎研究
掲載日:2025.04.21
投球による肘内側の靱帯損傷と外側の骨軟骨損傷を野球肘と呼ぶ。当科では、野球肘の診断、評価における超音波検査の有用性に注目し、2001年より世界で初めて超音波を用いた野球肘検診を開始し、その病態解明、治療に取り組んできた。2021年「運動器の健康・日本賞」の受賞をはじめ、マスコミ報道でも長年の活動が大きく取り上げられている。検診は成長期スポーツ選手を対象に山形県各地区で毎年行い、野球肘を疑った場合は、二次検診を経て早期治療に結びつけている。保存治療に抵抗性で手術治療に至った例では、病変を病理組織学的に評価し、野球肘の詳細な病態解明にもつなげてきた。
同時に、野球肘はじめスポーツ障害の再生医療研究にも当科では積極的に取り組んでいる。家兎を用いた研究で、多血小板フィブリン(platelet-rich fibrin; PRF)を用いた骨軟骨欠損や腱損傷の修復に成功し、臨床応用に向けて研究を進めている。
▲2001年山形大学が世界で初めて超音波を用いた野球肘検診を開始
内側側副靱帯起始部で上腕骨内側上顆が裂離している(矢印、左は超音波、右は模式図)
Harada M et al. AJR Am J Roentgenol. 2006
▲野球肘病変部の病理組織評価から得られた病態とその病期分類
Takahara M et al. Am J Sports Med. 2021
▲Platelet-rich plasma (PRP), platelet-rich fibrin (PRF)(F: PRF 使用例)
▲家兎に骨軟骨欠損部を作製し、多血小板フィブリンによる良好な骨軟骨修復に成功
(G, H, I: PRF使用)
Maruyama M et al. Am J Sport Med. 2017
▲家兎腱断裂モデル. 骨髄PRFによる早期からの良好な組織修復(D, H: 骨髄PRF使用例)
Uno T et al. Am J Sports Med. 2022