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掲載日:2025.06.23
老化に伴う筋力や筋量が低下する現象「サルコペニア」は生活の質を低下させるため,進行を遅らせることは個人的にも社会的にも望ましいと考えられます.筋肉の機能とミトコンドリア活性は密接に関係しており,加齢によるミトコンドリア(Mt)活性低下はサルコペニアの一因と考えられています.Mt機能に必須な生体小分子ヘムの生合成酵素である5-ALA合成酵素1(ALAS1)の遺伝子破壊マウス(A1+/-)ではサルコペニアが加速され(図1),その筋肉ではMt異常(図2)とオートファジー低下(図3)が起こっていることを我々は見出しました.加齢などで生じた異常なMtがオートファジーにより除去されることから,オートファジー低下で異常ミトコンドリアが溜まりサルコペニアが促進されていると可能性があります.さらに,ALAS1産物である5-ALAをALAS1遺伝子破壊マウスに投与すると,サルコペニア・オートファジー低下が改善されることが分かり(図1-3),サプリメントとして利用されている5-ALAを摂取することで,人でもオートファジーを活性化してサルコペニアを予防・改善できると考え,我々は研究を進めています.
▲図1:ALAS1遺伝子破壊マウス(A1+/-)での筋肉量(A)・筋力の減少(B) および運動耐性(強制走行距離)の減少と5-ALA投与によるその回復(C)
▲図2:ALAS1遺伝子破壊マウス骨格筋の萎縮したミトコンドリア(B)と5-ALA投与によるミトコンドリア異常の回復(D)(A:野生型マウス,C:5-ALA投与野生型マウス)
▲図3:ALAS1遺伝子破壊マウス(A1+/-)骨格筋での総LC3およびLC3-IIのタンパク質発現低下(LC3タンパク質発現量はオートファジー活性の指標となる)と5-ALA投与によるその回復