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卵巣がんの治療成績向上を目指した研究

掲載日:2024.05.17

医学部 教授 永瀬 智(産婦人科学)

 卵巣がんは婦人科がんの中でも治療の難しい病気です。その理由としては早期発見が難しいことや再発が多く、再発時は薬物療法が効かなくなることが挙げられます。
 私たちは、これらの問題を克服するためメタボローム解析に着目しました。メタボロームとは、環境や疾患をはじめとする様々な要因により変化する代謝物を網羅的に測定して細胞の機能解析や各疾患の診断応用などを研究する新しい技術です。
 私たちは、卵巣がん患者さんから癌組織と生体試料(唾液、血漿、尿)を採取してメタボローム解析を行い、癌組織内ではエネルギー代謝(解糖系、アミノ酸)やポリアミン代謝が亢進しており(図1)、癌組織と生体試料で共通して産生が上昇している代謝物がN1,N12-diacetylspermine(ポリアミン経路の代謝物)であり、この代謝物を用いることで高い確率で卵巣がんを診断できることを見出しました(図2)。ポリアミン経路は癌の生存・進展に関連していることからこの経路を標的とした新たな治療法を開発し、卵巣がんの治療成績向上を目指して研究を継続中です(図3)。

図1.卵巣癌組織内の代謝経路変化
卵巣がん細胞ではエネルギー代謝として解糖系(グルコースを乳酸に変換、Warburg効果)やアミノ酸代謝が亢進し、がんの増殖や分化に関連したポリアミン代謝も亢進していた。の画像
図1.卵巣癌組織内の代謝経路変化
卵巣がん細胞ではエネルギー代謝として解糖系(グルコースを乳酸に変換、Warburg効果)やアミノ酸代謝が亢進し、がんの増殖や分化に関連したポリアミン代謝も亢進していた。

図2.N1,N12-diacetylspermineによる識別能力
N1,N12-diacetylspermineによって卵巣がんを識別することが可能。診断能力は組織>血漿=尿>唾液の順。の画像
図2.N1,N12-diacetylspermineによる識別能力
N1,N12-diacetylspermineによって卵巣がんを識別することが可能。診断能力は組織>血漿=尿>唾液の順。

図3.現在行っている研究のまとめ
癌組織と生体試料(血液、尿、唾液)のメタボローム解析から血液が癌組織内の代謝変化を最も反映していることが明らかになった。N1,N12-diacetylspermineを含めた他の代謝物を組み合わせることでさらに高い卵巣癌早期診断法を開発中である。また、ポリアミン経路を標的とした新たな治療法を開発する研究も進行中である。の画像
図3.現在行っている研究のまとめ
癌組織と生体試料(血液、尿、唾液)のメタボローム解析から血液が癌組織内の代謝変化を最も反映していることが明らかになった。N1,N12-diacetylspermineを含めた他の代謝物を組み合わせることでさらに高い卵巣癌早期診断法を開発中である。また、ポリアミン経路を標的とした新たな治療法を開発する研究も進行中である。

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