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注目の研究医歯薬学

パーキンソン病とMIDNの関連性の研究

掲載日:2023.11.21

医学部 教授 小原 祐太郎(薬理学)

 本邦においてパーキンソン病は1000人に1〜1.8人、高齢者では100人に約1人の割合で発症する難治性の神経変性疾患です。中脳のドパミン神経細胞が徐々に死んでいくことで様々な運動症状が出ます。現在までに20種類以上の原因遺伝子が見つかっていますが、患者さんの90%近くは孤発例(遺伝しない型)であり、根本的な病気の原因がよくわかっていないのが現実です。 
 私たちは内科学第三講座との共同研究で、県内の患者さんの遺伝子解析を行いました。その結果、健康な方100人ではMidnolinMIDN)という遺伝子に異常が認められませんでしたが、患者さんの10.5%にMIDN遺伝子が欠損していることを見出しました。また英国の患者さんの6.55%にもこの遺伝子の異常が認められました。今では神経細胞やマウスのMIDN遺伝子を人為的に破壊すると、神経突起の伸長が抑制することがわかってきました。今後はMIDNの機能・役割を解明し、さらにその機能を増強出来るような薬が出来れば、嬉しく思います。

図1:(A)山形および英国のパーキンソン病患者さんの遺伝子解析の結果。パーキンソン病患者群では<i>MIDN</i>遺伝子の欠損が対照群と比較して有意に増加していた。英国コホートでは<i>MIDN</i>遺伝子の増幅例が認められるが、多くは<i>MIDN</i>遺伝子全長ではなく部分的な増幅であり、機能しないことが予想される。(B)山形および英国で見出された<i>MIDN</i>遺伝子の欠損症例の位置情報を図に示した。の画像
図1:(A)山形および英国のパーキンソン病患者さんの遺伝子解析の結果。パーキンソン病患者群ではMIDN遺伝子の欠損が対照群と比較して有意に増加していた。英国コホートではMIDN遺伝子の増幅例が認められるが、多くはMIDN遺伝子全長ではなく部分的な増幅であり、機能しないことが予想される。(B)山形および英国で見出されたMIDN遺伝子の欠損症例の位置情報を図に示した。

図2:<i>MIDN</i>遺伝子異常によるパーキンソン病の発症機構(仮説)。(A)神経のモデル細胞のPC12細胞(野生型)をNGFで刺激すると、神経突起を伸長して分化誘導されるが、<i>Midn</i>遺伝子を欠損した細胞では分化誘導されない。(B)中脳黒質のドパミン神経は線条体に投射してドパミンを分泌する。一方、<i>MIDN</i>遺伝子に異常があると、線条体への投射が出来ずにドパミンが不足し、病気の発症、進展の原因になることが予想される。の画像
図2:MIDN遺伝子異常によるパーキンソン病の発症機構(仮説)。(A)神経のモデル細胞のPC12細胞(野生型)をNGFで刺激すると、神経突起を伸長して分化誘導されるが、Midn遺伝子を欠損した細胞では分化誘導されない。(B)中脳黒質のドパミン神経は線条体に投射してドパミンを分泌する。一方、MIDN遺伝子に異常があると、線条体への投射が出来ずにドパミンが不足し、病気の発症、進展の原因になることが予想される。

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