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注目の研究化学

非平衡をキーワードとした自然界の構造・機能の化学的追究

掲載日:2016.10.14

教授 並河英紀(物理化学)

化学の教科書は自然界に通用しない!?

 高校では、反応物質を「密閉容器」に入れて一定時間経過させると、見かけ上の反応が停止する平衡状態に達すると習います。
 ところが、我々のカラダはどうでしょう?反応物質である食事を容器であるカラダに取り込み続け、化学反応を通じてエネルギーを獲得・消費しています。つまり、カラダという容器は密閉とは程遠く、物質などが自由に出入り可能な開放された容器なのです。カラダだけではなく、自然界の多くの現象は開放容器の中で行われるので、化学の教科書は自然界を理解するには不十分なのです。

「非平衡」から迫る自然界の本質

 カラダなどの開放容器では、その中での反応が停止しない「非平衡」状態になります。心臓も生きている間は反応(鼓動)が停止せず、同じ動きを繰り返し振動させています。これが自然界の機能の本質です。並河研究室では、自然界の非平衡を模倣した化学システムを解析し、自然界の様々な機能を理解するための化学・数理科学モデルを追究しています。

(1)カラダを模倣し連続的に反応物質を反応容器に流し続ける非平衡化学実験システム(上図)では、化学反応が停止せず周期的に振動する心電図のような挙動を示すことがあります(下図)。外部刺激がこの周期性へ及ぼす影響を解析することで、自然界の周期反応機能の解明へ向けた研究を行っています。

(2)もっと大きなスケールの太陽系では、原始太陽系の物質勾配により惑星周期構造が形成されました。これを模倣した非平衡化学実験システム(左図)やシミュレーション(右図:本学理学部・方教授提供)から、太陽系に似た周期構造が得られ、これらに基づいて自然界の周期構造形成機構解明へ向けた研究を行っています。

(3)カラダの中にある細胞を模倣した非平衡化学実験システムを用いて細胞と薬剤との相互作用を単分子レベルで観察することで、抗菌性材料などの機能分子デザインを追究しています。

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