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「都市」から見た芸術家と地域文化

掲載日:2016.09.15

 教授 石澤靖典(西洋美術史・表象文化論)

 私は、イタリア・ルネサンス美術史を専門とし、とくにボッティチェッリやレオナルド・ダ・ヴィンチらを輩出したフィレンツェ派の絵画に関心を抱いてきました。研究の軸となるのは、美術作品の内容や芸術家の評価に大きなかかわりを持つ「都市の美術」という視点です。たとえばフィレンツェ派の象徴のように語られるボッティチェッリの活動を調べてわかるのは、その生涯がまさにフィレンツェという都市の命運、あるいは土地の実質的な支配者だったメディチ家の賛美と深く関連づけて語られてきたことです。一人の芸術家のイメージ、あるいは「フィレンツェ派」という一つの流派が形成されるまでには、都市の歴史や政治、地域文化といったさまざまな外部的要素が複雑に絡まりあっていることが想定されるわけです。こうした問題意識からこれまでは、ボッティチェッリの作品にみられる「都市の美術」としてのメカニズムや、フィレンツェの詩人ダンテの代表作『神曲』との関連性を検討することが私の研究課題となってきました。

 加えて近年は、人文学部に附属映像文化研究所が発足したこともあり、近代東北の写真文化にも視野を広げるようになりました。東北初の写真家である菊池新学や明治時代の古写真に着目し、山形の近代的イメージを検討するシンポジウムの開催や論集の発行に力を入れています。「都市の美術」を導き手として、これまで培ってきたルネサンス文化へのアプロ―チが、山形の地域研究に結びつく地点を探っています。

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