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注目の研究人文学

近代を地方から描き直す

掲載日:2018.12.01

准教授 森岡 卓司(日本近代文学)

 「文学」といえば、美しい表紙に飾られて書店の棚に並ぶ本、すました作者の顔写真と共に教科書に載る教材などを、多くの人は思い浮かべるでしょう。でも、それだけが「文学」なのでしょうか。1950年前後の日本では、新たな社会において、何を「文学」と呼ぶべきなのか、どのような「文学」がこれから必要なのか、激しい議論がありました。そしてその議論の場は、中央のメディアに限られていたのではありません。地域のサークル誌、地方の新聞雑誌など、生活や体験、地域固有の歴史に、より密着した場において、先鋭的な論点が示され、戦後の偉大な作家たちも、そこから多くのものを吸収しました。こうした状況を調べていくと、それが狭く閉じられた問題ではないことにも気付きます。しばしば鋭い痛みをも伴う「近代」という経験は、それぞれの個性を持ちながらも、地域や国境を超えて、どこかで確かにつながっています。そのつながりは、商品として世界に流通する「日本の名作」だけでは知ることのできない、言葉が持つ重みを教えてくれます。

過去の新聞調査に使うマイクロフィルムリーダー の画像
過去の新聞調査に使うマイクロフィルムリーダー 

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編集を担当した著書は、全国紙の書評欄でもとりあげられ、話題を呼んでいます。

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