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掲載日:2025.03.21
自然言語は様々な法則で成り立っており、私たちはその法則を無意識のうちに知識として持っています。私はこの無意識の言語知識を研究しています。特に興味があるのは、日本語の格助詞の交替です。例えば、英語の Taro can speak French.を日本語に訳すと、(1)太郎がフランス語を話せる、 (2)太郎がフランス語が話せる、のどちらも可能で、両文の意味は同じように感じられます。違いは「フランス語」に後続する格助詞が(1)では「を」、(2)では「が」というだけです。しかし、この格助詞の違いが両文に異なった性質をもたらします。例えば、(2)では「太郎」に後続する格助詞「が」を「に」に交替できますが、(1)ではできません。私たちはこのような違いを教えられたことはなく、日頃意識することもありません。しかし、日本語母語話者であればこの格助詞の交替の可否を区別できます。このような無意識の言語に関する知識を探ることによって、人間言語の性質を明らかにしようとしています。
▲2023年に出版された論文です。オープンアクセスなので、インターネット上でどなたでもアクセスできます。
▲2023年の論文から引用した樹形図です。例文の分析を提示する際にしばしば用いられます。