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文学作品を通して社会や文化を探求する―メディア・テクノロジ―と文学との関係性に着目して―

准教授 英語文学

三枝 和彦(さいぐさ かずひこ)

文学研究の役割

イーヴリン・ウォー(Evelyn Waugh 1903-66)という作家の作品を中心に、20世紀のイギリス小説を研究しています。文学研究の役割は、端的に言えば作品の解釈を提示することです。ひとつの「正解」となる解釈を示すのではなく、様々な資料と突き合わせるなかで、作品が持ちうる多様な意味を見つけていくのです。この過程はときにスリリングでもあります。

文学作品は文化を構成する「糸」

作品本文はテクスト(もとは「布を織る」という意味のラテン語)と呼ばれますが、実際、作品は多様な事象の関連や影響の中で織り上げられたものと言えます。テクストとして解釈の対象になるのは、文学作品に限りません。それらはより大きなテクスト、つまり文化を構成する糸のようなものです。したがって、文学研究は文化研究であり、人間自体を研究する学問です。文学作品を媒介として、社会や文化、歴史など、幅広い領域について探求できるところに文学研究の魅力を感じています。

21世紀にも通じるテーマ

二度に及んだ世界大戦の間、戦間期と呼ばれる時代にデビューしたウォーの作品には、この時代の社会や文化の情勢が鮮やかに描き出されています。世界大戦の影響はもちろんですが、電話や電信、ラジオなどのメディアにも着目しています。20世紀前半に普及を始めたこれらのメディアと人間や文学との関りを、作品を媒介にして探り、考察しています。今では時代遅れともいえるメディアですが、そこに見出されるテーマは、技術が驚くべき程の進化を遂げた現代社会にも通じるものなのです。