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注目の研究工学

電子レンジで自動車触媒からプラチナの回収

掲載日:2018.03.12

准教授 遠藤昌敏(分析化学・環境化学)


日本で義務化されている廃棄自動車のリサイクルで、セラミックを主体とする自動車用触媒(排気ガスを浄化する装置)のリサイクルが困難だと言われています。現状では粉砕した素材が集積され、溶解・製錬工程によりプラチナ類が回収されていますが、粉砕工程によりプラチナ類以外の部分も回収されてしまうことや工程も多いなど、時間やコスト面での課題があり、より簡易なプラチナ類回収技術が必要とされています。

その為、この研究では①酸溶液・酸素濃度をコントロールし、電子レンジでマイクロ波を照射することにより短時間でプラチナ類を溶解できること、②その溶液からプラチナ類を還元回収するときにもマイクロ波を照射することで迅速に粉末として取り出せることを明らかにしました。

①について、解体により取り出したハニカム状セラミック製触媒に毛細管現象を利用し、少量の加温王水(硝酸1:塩酸3で混合した酸)を注入後、アルゴン雰囲気下で市販の電子レンジを用いてマイクロ波(500W)を数十秒照射した際にパラジウム、プラチナが高効率で溶出することを見出しました。王水を用いて貴金属を溶解する際、金属酸化物になると溶解性が低下するため、溶出雰囲気にアルゴンガスを使用することでプラチナ類の酸化を抑制させました。また、担体部分の溶出も少なく細管表面に存在する触媒微粒子を選択的に溶解させることにも成功しました。

②について、これまでは還元剤を用い、24時間を要していましたが、回収時においても電子レンジによりマイクロ波を数十秒照射することで迅速に粉末として取り出せることも明らかにしました。

これらの技術により、特殊な設備も運送コストも必要とせずに、解体現場の近くで迅速・低コストでプラチナ類を回収することが可能となり、国内の市場に提供できることが期待されています。

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