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農村と都市を結ぶ資源循環:下水処理水を用いた飼料用米栽培に関する研究

掲載日:2016.05.20

 教授 渡部徹(水環境工学)

 下水処理場(農業集落排水処理施設と呼ばれる施設も含む)は、家庭や事業所から排出される汚水を浄化して、放流先の水環境を保全することを目的に、全国各地に設置されています。その処理プロセスは、汚水に含まれる有機物の除去に主眼が置かれており、窒素などの肥料成分の除去は十分ではありません。本研究では、下水処理水に残留する肥料成分を飼料用米の栽培に有効に利用することで、低コストで高品質な飼料用米の栽培に挑戦しています。

 水田模型を使用した実験(写真左)では、下水処理水を水田に連続灌漑することにより窒素とカリウムの施肥なしでも飼料用米の栽培が可能であり、しかも高収量でタンパク質含有率の高い(標準値の約1.5倍!)米が収穫できました。タンパク質は家畜飼料の重要な栄養成分の一つであり、ここで収穫された米の飼料としての価値は高そうです。実験では、通常の水田を想定した対照区(下水処理水は使わずに、水道水と化学肥料を使用)でも良い成績が得られましたが、これは多量の肥料を投入した結果であり、下水処理水を利用することでこの肥料コストを大きく節約できます。また、水田で灌漑利用することで処理水中の窒素濃度は著しく低下することも明らかとなり、周辺水環境の保全にも大きく貢献することが期待できます。

 渡部教授のグループでは、国土交通省・GAIAプロジェクト、文部科学省・地(知)の拠点整備事業、そして山形大学東北創生研究所の支援を受けながら、最終的には下図(写真右)で示すような資源循環システムの実現を目指しています。現在も、畜産からの堆肥を水田で使って飼料用米を栽培する「耕畜連携」事業が行われていますが、この資源循環システムは、さらに消費者を巻き込んだ大規模な循環です。飼料用米栽培が国を挙げて推進されている今、なんとか早期に実用化にこぎ着けたいと願いつつ、本年度からは、鶴岡市およびJA鶴岡との共同研究として、実規模水田での実証実験を行っています。ご興味のある方は是非ご連絡いただければと思います。

実験中の風景の画像
実験中の風景

本研究で目指している資源循環システムの画像
本研究で目指している資源循環システム

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