PICK UP 研究

山形大学の特筆すべき研究を紹介! 世界を牽引する研究の世界を覗いてみよう!

医学部

北海道・東北初の重粒子センター
希有な総合病院との直結型。

根本建二 教授

放射線腫瘍学

 2021年、東北初の重粒子線治療施設として「山形大学医学部東日本重粒子センター」が本格始動へ。重粒子線がん治療とは、加速器(写真1)によって光の速さの70%近くにまで加速させた炭素イオン(重粒子)を患部にピンポイントで照射して、がん細胞のDNA分子構造を破壊する治療法です。日本の重粒子線治療は世界をリードし、公的保険適用が部分的に認められるなど、徐々に普通の治療になりつつあるにもかかわらず、既存の重粒子線治療施設6カ所はすべて関東以西。この医療インフラの偏在を解消すべく本学が10年以上にわたって設置を目指してきた取り組みがついに実現し、東北6県+新潟県、北海道までを広域にカバーする施設という位置づけになりました。しかも、従来の装置をそのまま導入するのではなく、省エネ・省スペース・ハイスペックな装置パッケージをメーカー(東芝エネルギーシステムズ)に提案し、画期的な「山形モデル」を構築したのです。

装置を小型化し、設備を重ねてレイアウトしたキューブ型の「山形大学医学部東日本重粒子センター」棟。渡り廊下で大学病院と直結している。

 従来の重粒子線治療施設は大型で施設の建設にはサッカー場ほどの敷地を必要としましたが、山形モデルは自由な方向からがんを狙い撃ちできる回転ガントリー(写真2・
3)を超伝導技術により超小型化し、敷地面積の限られた大学病院の一角に建設することを可能にしました。国内唯一の総合病院と直結したセンターということで、余病と重粒子線によるがん治療をあわせて受けられるようになっています。この回転ガントリーを含む先駆的な山形モデルは、既に韓国において1カ所は建設中、さらにもう1カ所では導入計画が開始されるなど国内外から高い関心を集めており、重粒子線治療の有効性が欧米でも立証されれば一気に普及していく可能性は大いにあります。

回転ガントリーにより360°任意にビームの照射方向を変えることができるため、寝たまま楽な姿勢で治療が受けられる回転ガントリー照射室。

回転ガントリー照射室の裏側、この施設の心臓部とも言える回転ガントリー本体。超伝導磁石を用いた装置の小型化に成功してもなお巨大。

世界も注目する先進医療、
その中枢で医学を学ぶ価値。

 今後、世界各地で山形モデルの導入が進めば、国際医療に山形大学が大きく貢献することになるとともに、山形県や「健康医療先進都市」を標榜する山形市との連携によりインバウンド患者の受け入れなども加速度的に促進されることになるでしょう。そして、世界をリードする重粒子線センターを有する本学医学部で学ぶ学生たちは、まさにがん治療の最前線を目の当たりにし、見学や実習などの機会にも恵まれることになります。その希少な経験は医師となった後も大きなアドバンテージとなるはずです。さらに、重粒子線治療だけではなく病院全体で外国からの患者を受け入れる体制を整備しており、「ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)」の認証を受けるなど国際化に取り組んでいます。学生同士の国際交流も活発化し、世界に通用する医師が育ち、それが地域医療の充実にもつながるに違いありません。

PROFILE

根本建二 教授

放射線腫瘍学

山形大学理事・副学長。東北大学医学部卒業、同大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学大学院量子治療分野、山形大学医学部教授、附属病院長を経て、現在に至る。