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注目の研究工学

早期に高い骨結合性を示す生体必須元素放出型インプラントの開発に成功

掲載日:2016.08.17

教授 山本修(生体機能修復学・医工学)

 山本修教授の研究室は、世田谷精機株式会社と共同で、生体骨に埋める新しい生体必須元素放出型インプラントを開発しました。歯科や整形外科で使うインプラント表面は、粗面加工やハイドロキシアパタイトで被覆されていますが、インプラントと骨との間の隙間による細菌感染・骨溶解を生じてインプラントの骨結合性が不十分となっています。この課題を解決するには早期に骨形成を誘導して高い骨結合性を獲得することが必要で、生体内極微量元素の1つである亜鉛やクロムをインプラント表面に付けて、生体内でインプラントから亜鉛イオンやクロムイオンを放出することで早期に骨内コラーゲンの架橋構造と骨誘導を促進し、臨床インプラントの骨結合力を3倍増加させることに成功しています。

高い結合性をもつインプラントの必要性

 高齢化社会の到来に伴って、歯周病などによって歯が抜けたり、関節炎によって歩行が困難になる事例が増しています。歯が抜けた場合の治療法の1つとして歯科インプラントを顎骨に移植することがあります。一方、股関節においては人工股関節を大腿骨に移植することがあります。これらの治療では、骨に人工の金属移植物を用いるため、 骨と移植物の高い結合力が求められます。しかし、様々な表面処理を施された医療用移植物においても、十分な結合力が得られていません。

 この課題に対して、人体にとって必須の極微量元素を移植物から放出することで、生体に安全かつ骨結合力が高い金属性移植物を開発しました。クロムは有害であると一般的に思われていますが、それは6価のクロム(Cr6+)イオンであり、我々は生体内のクロムと同じ価数をもつ3価のクロム(Cr3+)イオンを用いています。Cr3+は、骨形成時に生産されるコラーゲン分子同士を繋ぎ、強固なコラーゲン繊維となります。骨は、カルシウムやリンを主成分とした無機質部分とコラーゲンで作られているので、コラーゲンを強固にすることで骨結合力が増加します。また、亜鉛イオンは骨芽細胞への分化と石灰化を促進させます。

 この研究を進めることで、今後臨床で用いる動物用や生体用のインプラントを作製して、歯科口腔分野や整形外科分野で治療を受けた患者の健全な社会生活の早期復帰を目指しています。

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