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佐藤翼 人文社会科学部 人間文化コース 2年

派遣大学:ガジャマダ大学 派遣期間:2月19日~3月10日 

1.        日本語教室での活動内容

ガジャマダ大学での日本語教室は午前・午後90分ずつ月曜から金曜まで開催された。形としては有志の日本語に触れたいガジャマダ大学の学生が、自分の取らなくてはいけない講義の合間に自由に参加するものだったが、社会人だが日本語を学びたい人、ガジャマダ大学ではない大学からはるばる参加する学生もいた。

まずは授業のクラス分けについて。今回のガジャマダ大学への学生大使は、コロナウイルスによる影響か、ピークですら4人しかおらず、そこに多い時では20人以上もの受講生が集まった。基本的にはクラスを初級・中級・上級に分けて、学生大使を1人(人数が多いところには2人)。初級にはひらがなやカタカナ、簡単な自己紹介や数の数え方を教えた。中級には文法や簡単な文章を教え、希望者には漢字も教えた。上級には基本的に学びたいことを彼ら彼女らに聞き、質問に対して回答したり、小説を読ませてわからない表現について教えたり、日本で最近用いられている流行語やスラングに触れたりしていた。

次に詳しい内容と苦労した点について。

まずは初級クラスでの内容である。私は初級では五十音(拗音、濁音も含む)の読み方、書き順を主に教えた。初級クラスを教えているうちに気付いたインドネシア人が日本語を学ぶ上で壁になりうる点が3つある。まず1つ目は、「ラ行」の発音である。彼らが普段使うインドネシア語は「巻き舌」を多用することもあり、日本語初心者のラ行の発音が強烈な「巻き舌」になるケースが多く見られた。次に2つ目は「つ」の発音である。初級クラスでは五十音を書きながら読み、読みながら書きと重点的に教えるのだが、その中で「つ」が「す」と同じ発音になるケースが多かった。3つ目は「きゃ」「きゅ」「きょ」の発音である。いずれも練習すれば上手な発音になるが、日本語を学ぶ上での第一の壁のようになっている。また、初級クラスにおいて、カタカナの「シ」と「ツ」、「ソ」と「ン」の違い、「長音符」の使い方、「促音」の概念、ひらがなとカタカナの使い分けについては教えると、中級クラスに上がってからもスムーズに学習が進む点も今後の学生大使で役立つのではないだろうか。

次に中級クラスでの内容について。中級クラスでは文法や文章の作り方を教えながら、語彙力も増やしていった。自己紹介から5W1Hの日本語での言い方、道のきき方、時間の言い方や、過去形現在形等、思いつく限りの表現と、受講生にどのような表現を学びたいかを聞いて教える内容を決めていた。中級クラスでの苦労した点は、各受講生のレベルの幅である。これは今回の学生大使の人数が受講生の数に対して少なすぎたという原因があるのだが、中級の中でも日本語がある程度できる受講生と、初級から上がってきたばかりの受講生が混ざっているため、この問題は初級クラスの受講生が全員中級に上がり、中級に割ける大使の数が増やせるようになるまで続いた。

最後に私はあまり持たなかったが、上級クラスの内容についてである。上級クラスに来る面々はかなり話せる人ばかりなので、日本語の文法を教えても「もうわかっている」と言われることもあった。そこで助詞の使い方を教え、彼らの使う日本語がさらに自然になるように教えた。また、日本語の小説を読ませて文語表現に触れさせたり、最近日本で使われるスラング等を教えたりした。それでも時間が余ってしまう場合には中級クラスと同じく学びたい表現や、彼らをもってしてもわからない表現についての質問を受け付け、我々がそれに答えるという方法を採った。

各クラスを通して最も苦労した点は、何と言っても我々が使う英語が伝わりづらいことである。われわれが日本で今まで学んだ英語と彼らが使う英語が違うようで、書かないと伝わらないケースが多々あった。特に初級や中級に日本語を教えるときに、教える表現を一旦英語でいうときにそれが顕著に表れた。しかし手持ちのホワイトボードに「日本語の表現」と「英語での表現」を書くとほとんど通じるので、次期以降のインドネシアへの学生大使諸君にはこのことを参考にしてほしい。

2.        日本語教室以外での交流活動

日本語教室以外でも、インドネシアの学生たちと様々なことをした。

まずは時間の空いた時に必ずといっていい程したカードゲームである。彼らは日本での我々と同じように「UNO」や「大富豪」「7並べ」「ババ抜き」をし、宿に彼らが遊びに来たときはいつも遊んでいた。興味深かったのは、「大富豪」は日本ではそれぞれの地域もしくは学校ごとに独自のローカルルールがあるのだが、それはインドネシアも同じであることだ。カードゲームに限らないが、遊びは異文化交流のひとつの道具になりうるのかもしれない。

次に彼らとの食事について。学生たちは様々なレストランに我々を連れて行ってくれたが、SSというインドネシア料理の店は特に印象深いものだった。出てくる料理はみなおいしく、フルーツジュースの種類が豊富だった。インドネシアの学生たちが勧めてくれる料理はどれも素晴らしいものばかりなので、なんでも臆せず食べてみると、新しい世界が広がるものである。ちなみに私はいくつかのインドネシア語を覚えたのだが、その大部分は食に関するものであった。

様々な活動の中でインドネシアの学生とは様々な話をした。例えば歴史、地理、宗教や互いの文化の違い、あるいは同じところ、果ては恋愛の話を我々はよくしていた。我々にとって新鮮な考え方に触れられるため、仲良くなって「深い」話をすることは実りのある交流だった。

 3.        参加目標への達成度と努力した内容

私は今回の学生大使に当たって、「広い視野を身につける」ことを目標としていた。前述のとおり、現地の学生たちと「深い」話をしたり、日本語教室での教え方を考えたり、博物館の展示を見たりする場面で、いつもとは違う目線で日本語を、日本を、そして自分を見る必要があった。その中で参加目標は十二分に達成されたと考える。そこに至るまでは、私は日本での日常生活よりも大いに積極性が必要とされていた。そこで私は自分から行動するという、今までの自分が苦手としていたことを努力してできるようになった。

4.        プログラムに参加した感想

プログラムに参加してみてよかったと考えている。理由は前述でも触れているようなインドネシアの料理と、日本とは大きく違うおおらかな気質が私に合っていたことが大きな理由だろう。

5.        今回の経験による今後の展望

前述のとおり、私は今回のプログラムで「広い視野」と「積極性」が身についた。それらの力を今後も維持・発展させることで、この先の人生で何かを決断しなければならないときや、自分の行動が成否を左右する場面になったときにいい方向に働くことになるだろう。