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阿部ほのか 地域教育文化学部 文化創生コース 1年

派遣先大学:ベトナム国家農業大学 

派遣期間:2019年9月2日~9月17日 

<日本語教室での活動内容>

 日本語教室は10:00~11:30、15:40~17:10、18:30~20:00の時間に開かれる。山大生は夜の授業は必ず参加し、午前と午後の授業はどちらかに参加していた。初級クラスと上級クラス(コミュニケーションクラス)に分かれており、それぞれその日のテーマが決まっているため生徒さんは三回のうち一回に出席するのだが、熱心な方は二回参加していた。初級クラスではカタカナの練習や自己紹介を、上級クラスでは自由に会話やしりとりをして語彙を増やすことなどをした。夜の初級クラスは生徒数が多いため黒板を使っての授業だったが、基本的には山大生一人に対して3人~5人の生徒さんを受け持った。

私は初級クラスになるとたくさんのことを教えたくなって授業内容が盛りだくさんになってしまいがちだったが、他の山大生に相談して授業の最初に復習の時間を取ったり授業内で反復練習をしたりと進め方に気を付けた。これは少人数制の授業展開をする学生大使ならではの経験だと思う。 

<日本語教室以外での交流活動>

 主に日向クラブのメンバーが私たちと行動を共にしてくれた。日向クラブとはベトナム国家農業大学のクラブで、日本に興味のある人が集まり日本語や日本文化について日々勉強しているクラブだ。食事はほとんど外食だったため、その時に付き添ってくれる中でみんなと仲良くなることができた。時間のある時はメンバーのみんなが私たちの部屋に集まり、おしゃべりをしたりお菓子や果物を食べたりした。自然と日本文化についての話題を共有できたし、逆にベトナムの文化や言葉について学ぶこともできて良かったと感じている。また、日向クラブの方々は日本の歌をたくさん知っていて、一緒に歌う場面も多くあった。私は新しい日本の曲を教え、ベトナムの有名な曲を覚えた。音楽が国境を越えることを実感した経験である。

週末はバスやタクシーで様々なところに出かけた。陶器作りで有名なバッチャン村では、陶芸体験をした後に鍋敷きやコースターをお土産に買うことができた。ハノイセンターと呼ばれる中心観光地では、大教会を写真に収めたりハノイ名物エッグコーヒーを飲んだりしたのが印象深い。ベトナム美術博物館ではたくさんの絵を通してベトナムの歴史に思いを馳せた。どの場所でもとても充実した時間を過ごすことができ、嬉しく思う。 

<参加目標の達成度と努力した内容>

 日本語教室においては、分かりやすい授業を行い生徒の皆さんに日本語での会話を楽しんでもらうことを目標としていた。達成度としては少し満足ではないところがある。上級クラスでは自由に会話をする時に私が話題提供に困ったことが何度かあったからだ。生徒さんの日本語力に見合った会話を展開することは想像以上に難しい。難しすぎる言葉は使えないし、かといって既習事項ばかりを扱っていてはならない。

ただ、授業のテーマから自分なりに学習内容を膨らませることは努力した。例えば、オブジェクトの数え方を学ぶ回では私が持って行った図鑑を用いながら具体的な説明をするようにした。一口に乗り物といっても様々な数え方があるので、実際のオブジェクトを見ながら確認作業ができたのは良かったと思う。人間性についての語彙を学ぶ回の時も、身近なアニメの登場人物について日本語で表現することを促した。こうすることで、生徒さんの知っている単語を引き出しつつ、本人が伝えたい事柄を新たな単語に結びつけることができた。

 このように、今回の参加目標を達成するにあたっては、日本についての知識や日本語の難易度に対する理解が足りなかったと思う。一方学習内容を深めようと努力できたのは良かった。 

<プログラムに参加した感想>

 日本語を教えること自体未経験である上に、手探りの状態で授業を進めていかなければならないことに最初は不安もあった。しかし、生徒さんが真剣に学習に取り組む様子を目の当たりにして、私にできることを精一杯したいという意欲が芽生えた。毎日日本語教室に行って生徒さんや日向クラブのみんなに会うことが楽しみになり、母国語は違えどもコミュニケーションを取りたいという気持ちがどんどん大きくなっていった。言語のやり取りを通して得られる喜びをこれほど感じられるようになったのは、学生大使というプログラムだったからできたことだと思う。何より、同年代のベトナム人ととても仲良くなれたことが一番嬉しい。ベトナムで多くの優しい友達に恵まれたことに、感謝している。

 加えて、文化についても多くの学びがあった。私は食文化に興味があり、ベトナムでは現地の方々の食生活に実際に触れられたことに、このプログラムの良さを感じた。観光地で提供されるような食事ではなく、ベトナムの学生が日頃口にしているものを一緒に食べるというのはなかなかできない経験だと思う。ベトナムの食事といえばフォーやバインミーが思い浮かぶが、ブンという麺やバインバオという肉まんも人気料理であることに驚いた。

 学生大使のプログラムに参加することで、普通の留学では絶対に体験できないようなことができた。勇気を出してチャレンジしたことに心から満足している。 

<今回の経験による今後の展望>

 私はもともと日本語教師という職業に関心を持っており、それがこのプログラムに参加するきっかけになった。今は音楽を専攻しているが本当にこのまま勉強を続けていいのか迷い、ベトナム滞在中に答えが出せればいいなと思っていた。実際に日本語を教えるということは想像以上に楽しく、「日本が好きだから日本語を勉強する」という現地学生の言葉に日本語教師の存在意義を見出すことができた。少し具体的にこの職業をイメージできるようになったのも事実である。しかしベトナムの学生と歌を歌う中で、音楽が人と人をつなぐ力を持っていることも体感し、音楽の勉強も大切にしたいと思うようになった。

 今後は大学での学びに励みながら、日本語教師養成講座の受講を前向きに考えてみようと思う。今回の経験を活かし、何らかの形で日本語教育に携わる一歩を踏み出すつもりだ。

日本語教室の皆さんとの画像
日本語教室の皆さんと

帰国当日、日向クラブの皆さんとの画像
帰国当日、日向クラブの皆さんと

浴衣を着たベトナムの学生とアオザイを着た山大生の画像
浴衣を着たベトナムの学生とアオザイを着た山大生