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田中冴実 地域教育文化学部 造形芸術コース 4年

派遣先大学:新モンゴル学園 

派遣期間:2019年9月11日~9月25日 

<日本語教室での活動内容>

新モンゴル学園では決まった形の日本語教室はなく、受入担当者の中村先生と相談し、自分のキャリアプランや特性、生徒のニーズを踏まえて活動内容を決めた。行った活動としては大きく3つある。

1つめは、就職支援室での日本語の小論文添削だ。新モンゴル学園にはキャリアセンターがあり、日本に留学や就職が決まっている、あるいは留学や就職をしたい学生が相談に訪れる。特に、留学をするための志望理由書や小論文の添削をしてほしいという人が多い。添削は原稿用紙の使い方から文章の構成まで行った。日本で建築を学びたいというモンゴル高専のある卒業生は、モンゴルの地方の深刻な過疎化問題を取り上げ、日本で建築を学んだ後はモンゴルの地方に環境に優しい建物をたくさん建て、過疎化を食い止めたいと言った。モンゴルの特徴である美しい自然や自然と共生する文化は地方にあり、過疎化が進めばそのよさが失われてしまうからだ。添削をしていく中で、モンゴルのそうした問題を知って驚くとともに、自分の国をもっと良くしたいという想いに感銘を受けた。

2つ目は、日本の就職活動についての講義だ。新モンゴル学園では日本への留学や就職を考えている学生が多く、中でも高校3年生は全体の約3分の1が日本へ進学・就職をする。そのため就職活動を経験した大学4年生として、日本の就職活動はどういうものか、何をするのか、履歴書やエントリーシートの書き方、面接のマナーについて自分の体験談を交えながら講義をした。事前に中村先生から、新モンゴル学園には数学や何かのコンクールで賞を取る優秀な学生が多いが、それゆえ自己PRをするときにそれだけを取り上げてしまうというお話を聞いていたので、講義では自分の普段の行動から性格や考え方を知る自己分析の方法についても取り上げた。講義には高校3年生を中心に80人もの生徒が聞きに来てくれて、メモを取りながら聞いている生徒や講義後に質問に来てくれた生徒もいて嬉しかった。

3つめはライトペインティングのイベントだ。専門である美術系のワークショップを何かしようと思っていたところ、写真好きな生徒が多いと聞いたのでカメラとライトがあればできるライトペインティングをすることにした。イベントには工科大の学生とキャリアセンターの職員の方と合わせて8名が来てくれて、ライトペインティングにとても関心を持って参加してくれた。やり方が少し難しいので最初は皆戸惑いつつも、実際にやっていくうちにコツを掴み、面白い作品がたくさん出来上がった。初めて出会う人がほとんどだったが、一緒に制作することで一体感が生まれ、美術を通したコミュニケーションのよさを再認識した。 

<日本語教室以外での交流活動>

今回の派遣で特徴的だったのはホームステイをして滞在したことである。私は受入先の都合で、2週間のうち1週目は新モンゴル高専の教員養成開発担当の先生のご自宅に、2週目はキャリアセンターの職員の方のご自宅にホームステイさせていただいた。

1週目のホストファミリーは一人暮らしの女性で、英語が可能ということだったので基本的に英語でコミュニケーションをした。家ではモンゴル料理をふるまってくれて、テレビは日本の番組をつけてくれるなど気を使っていただいた。私が体調を崩した時は、モンゴル料理が合わなかったのではないかとスーパーで日本食や果物を買ってくださった。時々、同じマンションに住む小学三年生のお孫さんが遊びに来てくれた。彼は英語がとても上手で、英語の子供向けのアニメを見たり、英語のゲームで遊んだりした。私やホストマザーの英語が間違っていると分かりやすく直してくれたので、彼と話していると英語の勉強になった。

2週目のホストファミリーはキャリアセンターのザヤさんという方で、夫と3歳の息子と一緒に新モンゴル学園の寮に住んでいた。ザヤさんは日本に数年間いたことがあり日本語が上手だった。モンゴルの歴史や、モンゴルと日本のよい点、よくない点など深い話をよくした。ザヤさんといる時は日々の用事について行く形で過ごしたので、一緒に保育園のお迎えに行ったり、スーパーや市場に買い物に行ったりと、ウランバートルの日常を体験できた。

このように2つのご自宅にホームステイをさせていただいたが、ホームステイ先の家族だけでなくその親戚の方ともお会いしたので、結果的に5つの家族の暮らしを垣間見ることができた。日常的に身内同士で交流していることから家族や親戚の繋がりの強さを感じた。日本ではなかなかこのようなことはないので新鮮だった。

平日の空いた時間には工科大の学生と豊橋技科大学から来ていた日本人の学生と観光した。スフバートル広場や博物館、美術館、デパート、ザイサン、映画館、ガンダン寺、国立公園など様々な場所に連れて行ってくれた。日本語を勉強している学生だったので、日本について色々聞いてくれたり、モンゴルの文化を日本語や英語で説明してくれたりした。モンゴルはチンギスハーンだけでなく、ロシアと中国に挟まれた複雑な歴史もあることを知り興味深かった。

<参加目標の達成度と努力した内容>

参加するにあたって2つの目標を設定していた。

1つ目の目標は、社会に出ても役立つように語学力と国際交流能力を向上させることである。語学力については、日本語と英語を半々で使いながら過ごしていたので前よりは向上したと思うが、まだまだだと思う。国際交流能力については、学生やホストファミリーをはじめとして幅広い年代の様々な職業の人とたくさん交流したので向上したと感じる。

2つ目の目標は、実際のモンゴルの人達の生活様式を知ることである。都市の生活はホームステイを通じて体験できた。田舎の生活についてはゲルに泊まったり、ホストファミリーの知り合いで本当に遊牧生活をしている人の話をたくさん聞いたりして知ることができた。

<プログラムに参加した感想>

 モンゴルに来て、モンゴルの人は他に頼らず強く生きている印象を受けた。工科大の学生にそのことを言うと、そうかもしれないと返ってきた。モンゴルの人は基本的に他人に依存せず、自分は自分と思って生きているらしい。人が助けを求めても大抵は助けないという。それを聞いて少し驚いた。

例えば日本では、道で具合が悪くなった時は救急車を、事件や事故に遭った時は警察やJAFを呼ぶことができるように、何かあっても助けてもらえる・最低限の生活はできるという安心感がある。しかしモンゴルはそうではない。救急車は一応あるのだが、ウランバートル市内は常に道が渋滞しているので呼んでもすぐには来ない。事故に遭った車や、道路の壊れた部分はずっとそのままになっていて、気づくと無くなっているそうだ。また、噂に聞いていた蓋のされていないマンホールは本当にあり、時々人が落ちるらしい。途中体調を崩してしまったことも相まって、モンゴルと日本の環境の違いとそれが形成する精神風土の違いについて深く考えさせられた2週間であった。

<今回の経験による今後の展望>

 モンゴルでは体調管理の大切さを強く感じた。前半、モンゴル料理が合わず体調を崩してしまったからだ。体調が悪いと本当に何もできなくなってしまうので辛かった。最終的には病院に連れて行ってもらい、薬をもらって徐々に回復した。お医者さん曰く、「モンゴルへ来た外国人は通常の3倍の水分をとり、暖かいお湯やスープを飲んで体を温めること」だそうだ。モンゴルは乾燥しているので気温が低くても脱水になりやすく、また日中と夜の寒暖差が激しいからである。苦しかったが、これを乗り越えたことで成長できた。これから海外に行く機会があれば、この経験をもとに対策したい。

また、今回は新モンゴル学園の学生やホストファミリーをはじめとし、幅広い年代の様々な職業の人と出会えた。多くの人の考え方や価値観に触れ、刺激を受けた。相手も私の考え方や価値観に関心を持ってくれた。特に、現在取り組んでいる卒業研究の話をしたらとても興味を示してくれて、完成したら見てもらうことになった。卒業研究をより一層頑張り、多くの人に発信できるよう語学力を上げていきたい。

講義の様子の画像
講義の様子

ライトペインティングの画像
ライトペインティング

草原の画像
草原

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市場の民族衣装売り場