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派遣期間:平成29年3月7日~3月20日
日本語教室での活動内容
延辺大学では、主に外国語学部日本語学科の日本語クラスでの講義を担当した。日本語学科の学生は、ほとんど日本語が通じたため、授業は日本語で行った。派遣人数が多かったため、学生大使1人につき1クラス(90分、4回/週)を受け持った。授業では、日本文化や山形の紹介をできるような内容やゲーム・クイズを用意していたが、私の担当したクラスでは、教授と相談し、文法的な内容や教科書に沿った内容とした。例として、教科書が日本の東西での文化の違いについてだったため、東に宮城県、西に山形県を取り上げ、その地理や風土など文化を比較しながら紹介した。
また、日本語学科以外の学生が参加する日本語教室「日本語コーナー」に、講師として2回参加した。ここでは、日本語学科の学生に通訳してもらい、日本文化を紹介した。1回60分の活動で、1回目は持参したおもちゃを使って日本の昔あそび(けん玉、こま、お手玉、かるた)を、2回目は日本の若者ことば&方言(山形弁)と紋切あそびを紹介し、体験してもらった。担当する授業は1日1回だったため、空き時間で、別のレベルのクラスや英語学科の日本語の授業なども見学させていただいた。日本語学科の学生もそうでない学生も、日本語や日本文化を学びたい・知りたいという意欲にあふれていて、積極的に授業に参加したり質問をしてくれたりしたため、私もとても良い刺激を受けた。
日本語教室以外での交流活動
授業は午前中で終わることが多く、午後はチューターの学生と食事をしたり、買い物や観光に連れて行ってもらったりした。また、延辺大学は昼休み(11:30~13:00)にスポーツを楽しむ学生が多く、私も「キンボール」というスポーツを体験した。
休日には、中朝国境の見られる图门や、巨大なお寺のある日光山、延辺の郊外にある東来寺に案内してもらった。島国出身の私にとっては、国境を意識する機会がないため、ここを越えたら別の国だという感覚がとても新鮮かつ不思議だった。日光山のお寺も東来寺もお城のように大きく赤を基調とした鮮やかな彩色が印象的で、日本の滋味深いお寺との違いを感じた。
平日の日本語の授業のない時間には、延辺大学の英語や中国語の授業も見学させていただいた。英語の授業はイングランド人の先生が行い、学生全員が英語名を作りそれで呼び合ったり、廊下ですれ違う時には気さくに声をかけ合うなど、日本とは異なる点も多かった。外国語の会話でも臆することなくコミュニケーションをとっているその光景は、日常の中に中国語と朝鮮語が入り混じる延辺ならではなのかもしれないと感じた。中国語の授業は、留学生向けの初級クラスに参加した。教室に入るとすぐに見知らぬ私たちにも「你好」や「Good morning!」とあいさつをしてくれて、授業自体もアットホームな雰囲気だった。留学生向けの授業であるため、教えるときの言語は中国語か英語だと思っていたが、韓国人がクラスの大半を占めるため韓国語での授業で、驚きもあったが、英語がすべてではないということを目の当たりにした気がした。
参加目標への達成度と努力した内容
私の参加目標は、日本語教育を体験すること、漢族と朝鮮族の文化が共存する延辺を実際に見て、その生活がどんなものなのかを知ることだった。私は将来日本語教育に携わりたいと考えているため、今回のプログラムを通して、さまざまなレベルの日本語教育の現場を見ることができたことはとても大きな収穫だと感じる。また、いくつかのクラスを見学したことで、それぞれの先生の教え方も見ることができた。自分が行った授業については、日本語教育についてもっと勉強しなければいけないと強く感じた。授業ではクイズをしたり、座って聞くだけではなく立ち歩くような活動を取り入れたりと、授業を少しでも楽しいと感じてもらえるよう工夫した。しかし、文法的なことや日本語でも日本人が普段意識しないようなことについて知っておく必要があると実感した。
延辺は中国と韓国の文化そしてロシアの文化も混ざり合う町だった。学生や先生方の会話も、中国語で話し始めていたのがいつの間にか韓国語になったり、お店の看板もすべて中国語と韓国語の2言語表記、お店によっては3言語、4言語表記もあったりと本当に文化が融合している様子だった。しかし、そんな中でも延辺大学の学生は、「韓国人ではなく、朝鮮人」というように、自分がどの民族なのかという芯をしっかりと持っている印象を受けた。世界規模で文化が混ざり合おうとしているグローバル社会だからこそ、私たち日本人も、延辺の人々のように、自分が何人で、どんな文化を持っているのかをはっきりと意識しなければいけないと改めて感じた。
プログラムに参加した感想
渡航前には想像もできなかったほどのさまざまな経験をすることができ、とても楽しかった。ビザの不足や移動中の不安やトラブルはあったが、その度に現地の人々の気遣いや優しさに触れ、帰国してみると、すべてが貴重な経験だったと思える。しかし、日本語を教えることについて、勉強が足りていなかったことに悔しさも感じた。
また、中国では特に、言葉の壁を改めて感じた。中国・延辺の人々は英語が得意でないと知っていたが、空港職員すら英語が通じず、言葉が通じなくて困る、という経験を久しぶりにした。一方で、授業で1年間学んだ中国語が現地の人に通じたときの喜びは大きかった。自分の話した言葉が現地の人に通じた感動や、中国語と韓国語が入り混じる延辺で過ごしたことで、外国語を勉強する楽しさを思い出した。
今回の経験による今後の展望
延辺大学に行ったことで、私は4つの目標を立てることができた。1つは、もともと将来の夢であった日本語教育について、より深く勉強し、今年のうちに検定を受験することである。簡単に受かるような試験ではないが、今回の派遣で感じた悔しさをエネルギーに、自分に何が不足しているかを見極めたいと思う。2つ目は、中国語・韓国語・英語の語学力を磨くことである。1年間勉強した中国語も、現地に行ってみると特にリスニングができないことを痛感した。また、これまで全く興味を持てなかった韓国語も、今回の経験を通して興味が湧いた。英語も、今の自分の実力で満足せず、もっと上を目指してTOEFLなどに挑戦したい。3つ目は、文化について学ぶことである。延吉のお寺を訪れた際、そもそも中国から伝わったはずなのに、日本のお寺となぜこんなにも違うのかとても気になった。今後、このような文化の違いについて勉強していきたい。また、中国・延辺だけでなく、他の国にも足を運び、文化の違いを発見したいと思う。