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大崎教授の海外駐在記「ガジャマダ大学駐在記2(4)」

 毎朝未明の4時20分頃になると、至る所から、お経を唱えるような声が轟き渡ります。目いっぱいにボリュームを上げた拡声器を通して、その声が流れてきます。朝の祈りの時間が来たことを、皆に告げているそうです。拡声器は、ほぼ全てが日本製だと聞きました。この呼びかけの声には、コンクールがあるそうで、のど自慢達が、競って、独自に工夫を凝らした節回しで、20分ほど唸っています。

 私はこの朝の声を聞くと、不謹慎な話ですが、12年前に1年間過ごした、西ケニアのブヤング村を思い出します。夜明け前に、周囲の森一帯で、吠えざるが鳴き始めるのです。「バオオオオ~、バオオオオ~」と波状にうねりながら、相互に呼応するように、20分ほど鳴き声が響き渡ります。

 ジョクジャカルタと西ケニアの類似点はもう一つあります。このコーラスに、雄鶏たちの声が加わります。「コケコッコー、コケコッコー」しかし、ジョクジャカルタの鶏の密度はケニアの比ではありません。そして2時間ほどは鳴き続け、雌鶏やヒヨコの声も続きます。宿舎の前庭にも、彼らは大挙してやってきて、耳元近くで容赦なく鳴き喚きます。

 両国で飼われている鶏は、採卵用ではなく食肉用です。雌鶏は10数個の卵を一度に生み、孵化したヒヨコを3か月間かけて育て上げます。母親は口移しに餌をヒヨコに与え、普段の夜は樹上で過ごすのに、子育ての期間は夜も地上にいて、ヒヨコを敵から守ります。

 雌鶏たちには厳しい序列があり、餌場の良し悪しは、序列によって決まります。低位の雌鶏のヒヨコが良い餌場に紛れ込むと、高位の雌鶏が飛んできて、そのヒヨコを追い払います。しかし、高位の雌鶏が少しでも餌場を離れると、その隙をついて、低位の雌鶏がヒヨコを引き連れて良い餌場に突入し、居合わせた高位の雌鶏のヒヨコを蹴散らします。

 天敵への対処法は3段階あります。最初は、母子ともども物陰に駆け込みます。その余裕がないと、ヒヨコたちは母親が姿勢を低くして膨らませた羽根の下に潜り込みます。緊急時は、各自、その場で凍り付いたように動きません。天敵にやられるのはこの時で、母親から離れて勝手な行動をとっているヒヨコが犠牲になります。天敵の第一位はタカです。しかし、3か月たつと、母親の関心は雄鶏に移り、まつわり付く若鳥を激しく突き放します。

 6月6日に、農学部植物保護学科の昼食会があり、誘われて参加しました。3か月に1度、26人いる教員のお宅を持ち回りで開くそうで、今回は静岡大学で学位を取られた植物病理学の先生のお宅が会場でした。現役の先生方は勿論、名誉教授や学生、そして、その御家族も含めて50~60人が参加しました。食事はバイキング方式で、仕出し屋の従業員5人が、ガレージに用意し、給仕もしました。男性は前庭に集まり、女性は屋内にいました。

 敷地を巡ってみますと、裏庭は果樹園で、敷地の総面積は200坪ぐらいでした。途中、警官がやってきました。ちょうど大統領選の真っただ中だそうで、政治集会が良く開かれており、敵対集団の襲撃もあるそうで、どのような集会か、様子を見に来たそうです。

 最後に、誰かがコーランを読み上げ、全員が祈りの姿勢でそれを聞いて、2時間の会が終わりました。

宿舎の前庭に来た鶏の親子。の画像
宿舎の前庭に来た鶏の親子。

農学部植物保護学科の昼食会の画像
農学部植物保護学科の昼食会