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ガジャマダ大学駐在記6(1)

  このレポートから、2018年3月に退官された大崎先生に代わり、後任の菅原が担当します。私は、2017年4月から山形大学にまいりました。前職は公務員(山形県職員)です。大学卒業から27年間の公務員職務の中で、アメリカと韓国に述べ3年ずつ、計6年間の海外駐在も経験しました。この3月までの1年間は大崎先生からの業務引継ぎで各海外拠点を訪れながら、大学人としての「いろは」を学ぶ日々でした。より詳しい自己紹介は、後のレポートでさせていただきます。 

さて、この春に「研修期間」を終えた私は、本学がこれまで築いてきた本学海外拠点ネットワークの維持、拡充に努めると共に、海外拠点における主要事業に関わる仕事に就くことになりました。この稿は、7月9日から2週間の予定で滞在しているインドネシア拠点(ガジャマダ大学)で書いていますが、ここで直ぐご当地事情を語るには延べ滞在期間がまだ10日程度の自分には役不足ということもあり、今回は、大崎先生が創設された主要事業ついて自分なりの捉え方を整理し、その特徴をアピールさせていただきたいと思います。創設者以外の者の気付きが、その本質をよく伝えることもあると思うからです。 

  その主要事業は、過去の駐在記にもあるように、海外拠点校における「山大日本語クラス」の通年運営であり、そのクラスに山形大学生をチューターとして2週間から1ケ月程度派遣する「学生大使派遣プログラム」です。 

  この「学生大使派遣プログラム」に参加した山大生は、その経験を通じて化けて日本に帰ってくると言われます。その化け方は、一般的に「逞しくなる」と言って異論はないでしょう。もちろん、どんなプログラムであっても多感な若者が外国に渡れば、多かれ少なかれ逞しく成長して帰ってきます。しかし、一定の海外滞在期間当りにおける「学生大使派遣プログラム」がもたらす学生の成長度合いは、多くの海外・異文化体験プログラムの中でも最も高いものの一つと言えるでしょう。 

  その理由は、「学生大使派遣プログラム」の場合、日本人学生と現地学生等との対話機会が圧倒的に多く、しかも、対話の内容がどんどん深まって行くからです。「山大日本語クラス」に参加する現地学生等は、当然ながら日本に関心の高い現地の人ばかりです。その現地学生等にとって同世代の日本語ネイティブと触れる機会は極めて貴重なものですから、彼らは山大生の到着を現地で心待ちにしています。そして、山大生が現地に滞在する期間を通じて、彼らは山大生が話す一言一句に耳を傾けてきます。換言すれば、外国において、日本人学生が現地人の中でコミュニケーションの中心となる場面が生じるのです。この場面の創造をねらい、山大生に日本語・文化を伝える役割を担わせ、「日本」を切口とした山大生と現地学生等との接点づくりを図っていることが、プログラムの最大の特徴です。一般に長期の留学や海外駐在経験を通じても現地人と深い対話に至る機会は限られるところ、「学生大使」は、短ければ2週間程度の滞在ながら,現地学生等と四六時中対話を重ねることになるのです。 

  したがって、このプログラムにおいては、短い期間の外国経験でありながら、山大生の中に、同世代の人間どうしの深い対話の帰結として、外国人学生も同じようなことに喜び、また、同じような事象や場面において悩み、苦しむのだという共感がまず生まれます。そして、その共感をベースにして、外国の制度や文化、習慣等の違いから自然と、または、やむにやまれず生じるお互いの違いにも気づいて行きます。そのような共感と個々の気づきこそ、単なる知識にとどまらない、生涯身になる新しいものの見方です。そこで拡がったものの見方によって、学生が自らの日常を測る新しい「ものさし」を見出したり、何かに行き詰まったときにふと取り出せるもう一つの「ものさし」を得ていくことが、このプログラムが生む「逞しさ」の本質です。

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インドネシア拠点(ガジャマダ大学)での日本語教室

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日本語を習い始い始めて7日目の大学生