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ラトビア大学駐在記5-2

 今日は10月18日。ラトビアに来てから2週間が経ちました。来た当初は、まだ緑が溢れていたのですが、直ぐに木々の葉は色づき、紅葉は今が盛りだと思います。ユネスコの世界文化遺産になっているリガの旧市街地は石畳の街ですが、新市街地はどこもかしこも街路樹が植えられています。そのほとんどが菩提樹です。
 菩提樹は、人や車の通行の妨げになる下枝は刈り取られていますが、頂端部は伸びやかに聳え、5階建てのビルよりも高いです。その分だけ大量の落ち葉が舞い降り、朝は通り一面が黄色の絨毯を敷き詰めたようになります。それを毎朝、老人たちが掃き清めています。
 どの国に行っても、良い人も悪い人もいます。ラトビアも然りで、街でまごついていると声をかけてくれる人が常にいます。スマートフォンのフリーシムカードを買った時も、スーパーマーケットの割引カードを自動登録するときも、ラトビア語が分からずにまごついていると、必ず誰かが助けてくれました。
 しかし、一方でスリも多く、山形大生もスリの被害に遭っています。ラトビア大学本部本館の一階に山形大学サテライト・オフィスを開設した時に何度も念を押されたのは、わずかな時間でも部屋を留守にする時には、常に鍵をかけるようにという事でした。学生達に言われたのは、油断をすると私物を全部持っていかれてしまうよ、ということでした。
 山形大学日本語クラスは経済学部で行っています。校舎の入り口にロビーがあり、教室の鍵の管理室の窓口があります。その横にテーブルやソファーが置いてあります。ここに、クラスで使う白板や、白板用のペンや、白板消しを入れた袋カバンを置き忘れました。気が付いた時には無くなっており、学生も一緒に探してくれましたが、出てきませんでした。
 日本語クラスの上級用の教材に、良く、日本の詩歌を用いています。先日はキロロの「未来へ」を用いました。しかし、ラトビア人には理解できない箇所が幾つかあるようで、怪訝な表情で内容を何度も問い返す学生がいました。クラスの参加者の中にいた、物理学部を定年退職した先生には、「この歌は仏教哲学に基づいて作られているのか」と問われました。私は何とも答えようがなかったのですが、ラトビア駐在も5回目なので、彼等が何を問題にしているのかは分かる気がしました。
 親しくなったラトビア人が言うには、「日本人は人を信用しすぎる」ということです。ラトビアの家庭では「他人を信用してはいけない」と教えるそうです。首都のリガには多様な人種が生活していますが、多くは侵略者の子孫で、ラトビア人は被征服者として迫害され続けた様々な記憶の中に生きているそうです。
 私には、30年来の親しいポーランド人夫妻がいます。アメリカで知り合って、妻同士は毎週スカイプで話し合っています。彼らが、以前、私たちに口酸っぱく忠告したのは、「あんなに簡単に人を信じる子供に育ててはダメだ」という事で、私は気にしませんでした。ポーランドはラトビア同様に、周囲の国々に侵略され続けた国です。日本語クラスで、日本の詩歌が、理解できない不思議な思想に基づいて作られていると指摘され、国による文化の違いを、久し振りに感じさせられました。

大学本部裏手のヴェールマ庭園。正面に大学本部がある。の画像
大学本部裏手のヴェールマ庭園。正面に大学本部がある。

学生寮と菩提樹の並木。の画像
学生寮と菩提樹の並木。