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大崎教授の海外駐在記「ラトビア大学駐在記4(7)」

 

尺八とマリンバ

 6月20日午後7時から、国立音楽アカデミー2階の大ホールで、日本大使館主催の音楽会がありました。国立音楽アカデミーは、山大サテライト・オフィスを置くラトビア大学本館と、山大提供日本語クラスが行われるラトビア大学経済学部の間にあり、玄関の正面には、路面電車の走る道路越しに、リガに何軒も支店のある「東京」と言う名の寿司店があります。

 音楽会の公演名は「尺八とマリンバ公演」とそっけないものでした。ホール入り口には、何人かの大使館員がいて、会場案内をしていましたが、その中心にいた女性が、後に挨拶に立った、新任の藤井眞理子大使でした。280人が入る会場への入場には、あらかじめ大使館で配布する無料入場券が必要でしたが、ほぼ満席になりました。

 舞台に出て来たのは、スマップが着るようなフロック・コートのコスチュームを着た40歳前後のイケメン2人で、尺八奏者は藤原道山さん、マリンバ奏者はSHINSKEさんと言い、後に知ったのですが、世界を股にかけて大活躍している人達でした。藤原さんは音域の異なる6本の尺八を自在に扱い、SINSKEさんは、長さ3mのマリンバを、片手に2本両手で4本、あるいは、片手に3本両手で6本のマレットを握って、巧みに演奏しました。

 彼らのオリジナルだという和風の曲、例えば「風神」「雷神」などにも、聴衆は鋭敏な反応を示しましたが、聴衆になじみのべートーヴェンの「交響曲第五番運命」、ブラームスの「ハンガリア舞曲第5番」、ムソルグスキーの「展覧会の絵」、ラベルの「ボレロ」などが演奏されたときには、文字通り、拍手が鳴りやまなかったです。

 ラトビア大学本館2階には、中国政府提供の孔子学院があり、毎晩常設の中国語講座を開くとともに、年に何度も中国文化を紹介する催しを行っています。先日、日本語クラスにやって来た女子高生が、何かの催しに行って来たと言いながら、団扇で風を送っていたので手に取ってみると、大きく中国語が書いてありました。ラトビア大学人文学部には韓国政府提供の韓国研究センターがあり、先日は、学内で、韓国映画祭を行っていました。

 それに比べて、ラトビア大学内での日本と言うと、山大提供日本語クラスがあるだけです。日本語クラスには、今回、ラトビア大学物理学部の教員2名が常連として参加していますが、年長の60代の先生の話だと、学部教員に送られて来る伝達メイルで、山大日本語クラスを知ったそうです。つつましやかながらも、学内で存在感は主張しているようです。

 音楽アカデミーの大ホールで、鳴り止まない拍手を聞きながら、私は、先年、ゴルフ場の落雷で亡くなった、米国メリーランド大学教授で生態学者のDenoさんが、心地よく酔って吐いた言葉を思い出しました。来日の飛行機に米国のスポーツ選手が同乗していたそうで、成田空港には選手を迎える人々がいて、彼はその横をすり抜けて空港を出たそうです。

 彼の主張は、「あのスポーツ選手よりは、私の方がアメリカの名を高めている。」というものでした。確かに、国際学会で、Deno教授に向けられる若手研究者たちの熱い眼差しは印象的なものでした。しかし、山大日本語クラスに通って来る若い学生達の眼差しも、熱いものがあります。8月に山大生がチューターとしてやって来る、と告げた時に沸き起こった喚声は、国立音楽アカデミーで起こった喚声と変わらないものに聞こえました。

尺八とマリンバの画像
尺八とマリンバ

午後9時頃の市内
(右:国立音楽アカデミー 左奥:ラトビア大学経済学部)の画像
午後9時頃の市内
(右:国立音楽アカデミー 左奥:ラトビア大学経済学部)