ホーム > 国際交流・留学 > 海外拠点情報(駐在記) > ハノイ海外拠点(ベトナム) > 大崎教授の海外駐在記「ハノイ農業大学駐在記3(4)」

大崎教授の海外駐在記「ハノイ農業大学駐在記3(4)」

 ハノイは厳冬に向かっており、日本の冬と同様に、ショーウインドウのマネキンも、街ゆくおしゃれな人々も、ダウンジャケットに襟巻で、毛糸の帽子を被った人もいます。しかし、私には日本の初秋の気候で、長袖のシャツに毛糸のベストが心地よいです。

 山形大学のサテライト・オフィスは、10棟余りの学生寮の並ぶスチューデント・キャンパス内の、2階建ての大学図書館の2階にあります。冷房器具としては、扇風機があるだけで、私が初めて過ごした昨年の5月は、熱さや湿気に耐えきれず、クーラーの効いた大学本部の農業生態学研究センターの計算機室に避難しました。しかし、この12月の陽気は、サテライトでの生活を快適にしています。

 サテライトの管理人は、はや5代目で、4代目まではハノイ農業大学の学外から採用した非常勤職員が、週2回、部屋の管理に来ていましたが、なかば空き事務所か倉庫状態でした。しかし、今年からは、学内の国際教育院の事務員に採用されたLuc君がサテライトの管理人も兼ねています。彼は非常に几帳面な人であるらしく、サテライトは清潔に整理整頓され、飲料水の施設も常設されていました。

 私は月曜日から木曜日の午前中、9時半から11時半まではオフィス・アワーとして、留学相談を含め、よろず相談時間を設け、そのことをハノイ農業大学のHPを通じて広報してあります。Luc君は、その時間帯は常にサテライトに詰めており、まず私にコップに入った水を勧めてから自分の席に戻って、何かをしています。英語があまり得意でない学生が相談に来ると、彼はすぐに通訳を買って出ます。

 彼は英語の達人で、私はかって彼ほど英語を流暢にしゃべる日本人に、身近で接したことがありません。彼は農学部で土壌共生菌の卒論を書いた今年の卒業生ですが、どこでその英語力を身に着けたのかを聞いてみました。勉強法は主に3つで、英語の歌を沢山聞き、歌詞を沢山覚えた。DVDで英語の映画をよく見た。テレビでCNNニュースをよく見る。

 留学相談に来るのは、主に顔を見知った日本語クラスの学生で、オフィス・アワーよりも、夜にゲスト・ハウスに来て相談する学生の方が多いです。相談は公的な奨学金についてで、その取得が難しい事と、親の年収を超える授業料や生活費の額を知って、うなだれて帰るのがほとんどです。彼らが訴える不満に、山形大学の英文HPから、学問分野に関する具体的な情報を十分に得られない、というものがありました。

 この業務を始めてから思い知ったのは、学生が自由に留学先を選べる場合、ほぼ例外なく、彼らの先生が留学した研究室を選ぶか、先生の昔の級友が主宰している研究室を選ぶことです。サテライトに何度も留学相談に来て、ようやく国費や私企業の奨学金を得た学生が、最後の最後に山形大学ではなく、そのような他国や日本の他の大学へ留学すると、喜びに満ちた表情で報告に来ると、ちょっと複雑な思いになります

 奨学金受給の可能性ある学生を山形大学に紹介し、先生方に受け入れの是非を打診すると、快諾してくれる先生もおりますが、即座に拒否するか、煮え切らないまま時を過ごされる先生がいます。この場合、2代、3代にわたって、留学生を失った気分になります。

サテライトの管理人Luc君の画像
サテライトの管理人Luc君

オフィス・アワーの画像
オフィス・アワー