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大崎教授の海外駐在記「ベトナム国家農業大学駐在記3(3)」

 ベトナムの国花は蓮です。ベトナム国家農業大学本部の前には、40~50メートル四方の四角い蓮池が田の字状に4つあり、季節には、池全面を覆う白い蓮の花が咲きます。しかし、今の時期は花の季節ではなく、池面からは、長く伸びた花茎の先に、花弁が落ちて枯れた花托があり、葉も茶色に変色しかかっています。しかし、先週、池に二隻の小舟が浮かべられ、一週間かけて、枯れた蓮の花茎や葉は刈り取られ、池から持ち去られました。今は、広い池面が現れ、池の隅に、ピンクの熱帯睡蓮の花が咲いています。
 そんな時に合わせたように、インターネット新聞に、琵琶湖の蓮が消えた、というニュースが載りました。琵琶湖には、甲子園球場の10倍の広さの蓮の群生地があり、観光の名所になっているそうです。そこの蓮が突然に消滅したというのです。その原因として、枯れた蓮の葉や茎が湖底に積み重なり、土壌が有機物で嫌気的状態となり、酸素不足で枯れたのだろう、とありました。毎年、続けて美しい蓮の花を咲かせるためには、労力をかけて、生育環境の整備に努めなければならないのだと、改めて気づかされました。
 山大提供日本語クラスの午前の部に、最も熱心に通ってくるのは、ベトナム国家農業大学の学生ではなく、ハノイ貿易大学の卒業生のチャンさんという女性です。来年5月から日本の有機農業会社で3年間のインターンをするそうで、ベトナム国家農業大学の近くの農園で、朝夕野菜の収穫仕事をして、その合間に、日本語クラスに通って来ます。
 彼女の話では、ベトナムの3大問題点は、農薬に汚染された食料と、汚い水と、汚い大気だと言います。特に、野菜は、中国製の農薬を大量に撒いた直後に出荷されており、ベトナム人の健康を損ねているはずだと言います。彼女も、彼女の御両親も、良く腹痛に悩まされているそうですが、それは、農薬に汚染された食料が原因だと考えているそうです。
 彼女の大学の2年先輩に、豊かな家庭の息子さんがいるそうで、彼は2か月前に、家の近くに1ヘクタールの畑を買って、小さな農園で有機農業を始めたそうです。しかし、彼もチャンさんも農家の出身ではなく、大学も農業大学ではないので、彼は大学卒業後に、農園で働いて農業を学んだそうです。チャンさんも今はその農園で働いているそうです。
 しかし、チャンさんの親は、チャンさんが農業をすることに大反対で、日本に有機農業を学びに行くことにも反対しているそうです。せっかく貿易大学を卒業したのだから、ハノイの会社に就職して、事務系の仕事に就くようにと言っているそうです。
 彼の親も同様で、彼の熱意に負けて、1ヘクタールの畑を買ってくれたそうですが、今でも、彼には警察官僚かビジネスマンになって欲しいと言っているそうです。望めば、ホワイトカラーの良い仕事が保証されているのに、なぜブルーカラーの仕事に就くのか理解できないと嘆いているそうです。
 そこで、私は日本では農業も次第に会社化され、コンピューター制御されたホワイトカラーの仕事になってきている、と言いました。するとチャンさんは、彼女たちの目指す農業は、会社化された農業ではなく、小さな農園で手作りする、安全な有機栽培の農業だと言いました。こんな話を、日本に行くために学びだして丸一年の日本語で、話してくれました。

枯れた蓮の刈り取りの画像
枯れた蓮の刈り取り

熱帯睡蓮の花の画像
熱帯睡蓮の花