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【立川志らぴー やったぜ!二ツ目昇進落語会in山形】落語初心者によるレポート

 

 
落語レポート サムネイル.png
 
5月27日(土)に行われた、立川志らぴー やったぜ!二ツ目昇進落語会in山形へYUM!の2人で行きました。

 

おそらく多くの大学生がそうであるように、私たちは落語を生で感じたことがありません。存在は知っているけれども、意識したことがない。私にとって落語とはそんな存在でした。しかし今回の公演はとても印象に残りました。

 

落語初心者の私たちが感じた印象をレポートするので温かい目でご覧ください。

目次
  1. 公演前に舞台裏に潜入
  2. 演目ごとの感想
  3. 気になったこと
  4. 全体の感想
  5. 終わりに


会場の様子はこんな感じです。
落語会の会場である遊学館
遊学館内のホール前
志らぴーさんの記事と二ツ目昇進祝いの色紙
お祝いのお花
 

 

志らぴーさんのご厚意で、開演前にインタビューをさせていただきました。

 

意気込み

「山形出身ではないため、山形に繋がりを作る第一歩の会だと思っています。お披露目で終わるだけでなく、今回の盛り上がりを維持したまま、ここからさらに輪を繋げていきたいです。」

 

ー繋がりという言葉を大切にしているのですか

「そうです。例えば、この遊学館は私が落語と出会った場所です。DVDコーナーにあった落語を見たことがきっかけで落語に興味を持ったんです。例えば、ふすま同窓会は山形大学の卒業生である私を温かく応援してくださいました。在学中は一度も関わったことなかったんですけどね(笑)。そういった繋がりを大切にしています。」

ーお披露目で終わらないような策は何かありますか

「定期的に山形で落語会を開催したいと思っています。独演会を3ヶ月に1回の定期会にしたいですね。実は、早速第1回目の定期独演会『落語アリマス』を2023年7月23日(日)に山形テルサで開催予定です。あとは蕎麦屋などの飲食店での開催なども考えております。」

山形での独演会の第1回目である「落語アリマス」

 

落語は口語の文学

「落語の特徴として、口語で伝承されている、口語の文学ということがあります。落語の言葉は不完全な日本語です。不完全だからこそのリアリティ、日常感があります。」

ー口語の文学とは面白い表現ですね。日常感があるというのは。

「百川という勘違いをテーマにした古典落語があるんですが、間違いを指摘された時に『じゃ、ちがった』といけしゃあしゃあと言う人が出てくるんです。私なんかはこれを真似して友人に何か間違いを指摘された時に『じゃ、ちがった』とおどけたりします(笑)。日常で使えるでしょう。」 落語は人間が出る 「日常で使われている口語だからこそ、話し手によって落語の味が変わります。落語は人間が出るというのはよく言われることです。そそっかしい人がそそっかしい人をやると面白い。パーソナリティに合った落語があります。」 ーそれでは志らぴーさんはどんなパーソナリティを持っているのでしょうか。 「私はのんびりした落語が自分に合っているのかなと思います。」 ー人間性はどのように育てているのですか。 「映画などの芸術に触れることです。私は家元と志らく師匠の影響で見ることが多いです。例えば、ミュージカルの『雨に唄えば』、映画は『昼下がりの情事』と『情婦』と『アラビアのロレンス』などがお気に入りです。」 演目ごとの感想 全ての演目が終わり席を立つと、会場の外には演目が書かれた紙が貼ってありました。

 

 

2.演目ごとの感想

浮世床〜夢〜
あらすじ〜
あまりにもうるさいいびきをかいて眠っていた半次を起こしたところ、出会った素敵な女性と、その一夜にして、同じ布団に入って寝ようとしたというあまりにも夢のような惚気話をし始めたのだ。
そんな夢みたいな話のその後の続きを半次に求めたところ、「一緒に寝たところで…俺を叩き起しやがったのは誰だ!?」と言い放った。
つまり全て「夢」の中の話だったと分かったところで落語のお話は幕を閉じる

(私たちの感想)

・実際に聞いてみて、起こされた半次が惚気話を始めた時から、その話が夢だと明かされるまで、一時も夢の中の話をしているのだと疑わずに聞いて、最後に明かされた時の、裏切られた感がたまらなく面白かったです。
・舞台が床屋から動かないのにも関わらず躍動感あふれる語り口で楽しめました。落語の中の人物が話している様子を、落語家が私たちに伝えるという2回の伝聞が必要なので難しそうだった印象です。

 
 

ちりとてちん

〜あらすじ〜

今日が誕生日の旦那は、世辞の上手い喜ィさんを読んで昼から一杯やった。喜ィさんは出される料理やお酒、更にはお米など全てに対して「生まれて初めて食べる」と言い、「美味い」と言いながら飲み食いする世辞の上手い人である。それと打って変わって、知ったかぶりばかりする竹さんは、どの料理やお酒に対しても「美味い」の一言は言わず、「炊き方が下手くそ」なと文句ばかり話している。そんな竹さんに仕返しがしたい旦那は、奥さんが忘れて腐らせてしまった豆腐(黄色く毛羽立ち、なんとも臭い代物)を竹さんに食べさせようとする。その豆腐の他様々なものを混ぜて瓶に詰めたものを、「ちりとてちん」と呼んだ。実際にはそんなものは存在しないのだが、竹さんは「知ってる」「食べたことある」と話す。実際に食べると、オェ〜と言いながら、美酒で流し込み美味かったと話す。旦那が最後に「私食べたことないんだけどどんな味するの」か問いかけたところ、竹さんは「ちょうど腐った豆腐のような味がする」と話してこの落語は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・実際に聞いてみて、なんでも知ったかぶりするのは良くないというのは改めて痛感したところでした。そのうえでこの落語は今回、私の中で終始笑い続けていた落語のひとつで、落語の世界を親しみやすい話で大好きな物語でした。

・随所に山形人へのジョークが含まれていた。知ったかぶりをしただけで腐らせた豆腐を食べさせるの可哀想だなって思っちゃいました。このあとの関係性がどうなっちゃうのかなと考えさせられる落語。喜ィさんのお世辞が面白かったです。
 
 

舟徳

〜あらすじ〜

居候の身の徳兵衛さん(徳さん、若旦那)は、親方に、どうしても船頭になりたいのだと話す。そして親方は船頭仲間に若旦那が船頭になることをお披露目する。
親方から呼ばれた船頭仲間達は、始め、親方に怒られるのかと思い、過去に犯した過ちを、怒られる前に謝ろうとした。しかしながらその全てが、親方には初耳で、やぶ蛇になってしまう。
ある日船頭が皆出払っている時に、馴染みの客がやってきた。船宿のおかみは、船頭はいないと話すが、客が、徳さんのことを見つける。
徳さんは以前、赤ん坊連れのおかみさんを川に落としてしまったこともあるそうで、本人は「大丈夫だ」と話すが、馴染みの客は一気に緊張の面持ちになった。
船宿を出た舟は、途中石垣にぶつかったり、波にやられ転覆しそうになりながらも目的地に向かって進んでいく。漕ぎ疲れた徳さんは、あってのことか、客に「前から船が来たら避けてください」などと話す。
その後目的地の大桟橋の近くまで来たが、浅瀬に乗り上げてしまった。
徳さんは、客に、土手まで歩いてくれと話し、別れ際にぐったりしていた。客が「若い衆(=徳さん)、大丈夫か?」と聞くと、「帰るとき船頭1人雇ってください」と徳さんが話してこの落語は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・事故ったりして大変なこと、もう漕ぎ疲れたことから、帰りは別の人を雇ってくださいと話していました。しかし、この話は初心者の私には少し難しかったです。というのも、物語の中で、船頭仲間達が過去の過ち等を親方に話す場面までは面白かったのですが、その直後の、お得意様が来た時に、船頭が皆出払っていて、徳さんしかいなかった時のシーンを理解するまで時間がかかりました。話のあらすじ等も知らなかったので、このお話が、徳さんの成長の物語になるのかなと感じていたところもあり、シーンの移り変わりのタイミングで難しさを感じてしまい素直に笑えなかったところもありました。この直前にやっていた、ちりとてちんがとても面白すぎたこともあってか、難しさが残る話に感じました。しかし、真打がやるというこのお話に挑戦した志らぴーさんは素敵だなと感じました。私も挑戦する気持ちを大切にしたいです。

・若旦那の人柄が、注目されたくて自信満々でした。それでいてあまり努力をしない人なのかなと感じました。これは志らぴーさんのパーソナリティから離れている印象があるので演じるのは大変なのかなと思いました。でもこれを選んだ理由が「志らく師匠のきっかけの落語だから」ということで納得しました。

 

 

笠碁

〜あらすじ〜 
碁がたき(碁敵)同士が、今日は「待った」なしで打とうと碁を打ちはじめる。しばらくすると、形勢が悪い方が「待った」と話す。相手は「待てない」と言い、お互い「待て」、「待てない」と強情を張る。
挙句の果てに、一方は一昨年の暮れに金を貸したのを恩に着せ、返す日を延ばしてくれと言われた時に、「待った」してあげたでは無いかと言い出す。これには相手も怒りだしお互い「大へぼ」、「大ざる」と罵りあって喧嘩別れとなる。
そのうちに雨が何日も続き、1人は、喧嘩別れした相手が懐かしく、碁が打ちたくてたまらなくなる。傘がないので、菅笠を被って出かける。もう1人も碁が打ちたくてしょうがないのだが、碁会所では、皆強すぎて相手にならないから、喧嘩別れした相手が1番いいのだという。相手は相手で、自分しか相手がいないことを分かっている。
先程出てきた菅笠を被った相手が家の前を通りかかるが照れくさく中へ呼び入れることが出来ない。
相手も照れくさく、家の前を何度も行ったり来たりするだけだったので、碁盤を持ってこさせ一人でパチン、パチンと碁石を置き始める。相手も音が気になって近づいてくるが、また通り越してしまう。どうにもたまらなくなって、お互いに「へぼ」と言い合う。私がへぼかどうかを、1番しよう(1勝負しよう)と話し、その誘いに相手も乗る。
中に入ってきて喧嘩別れしたことなどすっかり忘れて碁を打ち始めるが、なぜか碁盤に雨のしずくが落ちてくる。いくら拭いても落ちるので、ひょいと見上げると、まだ被り笠を取ってないことに気づき、「待った」と話しこの落語は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・落語の本編に入るまでの志らくさんの話が面白く、ちりとてちん同様、私の中では笑いが絶えない落語でした。お互いに喧嘩別れしても、私にも相手しか、相手にも私しかいないと信頼し合ってる姿、そして何より志らぴーさんがこの落語がきっかけとなったことも頷けるとても面白いお話だなと思いました。

・圧倒的に面白いなと思いました。運営の方に「初めての落語が志らくさんで羨ましい」と言われた理由がなんとなくわかります。物語に引き込まれるどころではなく、館のコマ使いの一人となって実際に様子を見ていた気分です。掛け合いが身内ネタという属性を持ち、たわいない振る舞いで強烈な面白さを生んでいました。特に、私含めお客さんが手を叩いて笑った瞬間に「そこ手ぇ叩いて笑ってるんじゃないよ!」と言われた時に衝撃を受けました。らく萬さんと志らぴーさんが山形人狙い撃ちのジョークを使っていたのも、身内ネタなら些細なことも面白くなるという効果を狙っていたのかもしれないですね。

  

 

 

3.気になったこと

初めての落語ということで気になったことがたくさんありました。紹介します。

 

演目は直前に決まる

なんと落語の演目はお客さんの反応を見ながら直前に決めるそうです!

 

私たちの取材が終わったあとから開演までの時間で、らく萬さんから山形県人の人柄について尋ねられました。山形の人はラーメンが好きで、特にこれからの季節、冷やしラーメンが大好きだと伝えました。すると、らく萬さんの枕で冷やしラーメンの話が出てきたんです!

直前に仕入れた話題さえも組み込むことができる落語家にびっくりです。

落語の流れ

落語の本編が始まる前に枕と呼ばれる導入があります。この導入がすでに面白い。本編と比べて体の動きは少なく、起こったことを話している様子が、いわゆるエピソードトークのように感じました。

何より驚くことなのが、この枕、本編の導入なので話したい落語へ滑らかに繋がるような工夫がされていることです。身の上話を聞いているうちに落語に入り込むことができます。

本編に映るときに羽織を脱ぐのですが、枕と本編のグラデーションに気づくための仕掛けですね。

 

始まりと終わりの太鼓

始まる時と終わる時に太鼓が鳴っていました。調べてみると、始まりは「ドンドンドンドンドンと来い」、終わりは「でてけでてけ」と気持ちを込めて打つそうです。

マイクなどの拡声器がなかった時代の工夫を感じます。

 
 

 

4.全体の感想

・今回の落語全体を通して、面白かったものは、落語の物語の世界の一員に自然となっていたと感じます。難しかったものは、どちらかと言うと映画やドラマを見ているような感覚がしました。
落語の物語の世界に聴者を言葉だけで引き込む落語家はとても素晴らしいものだと感じたし、「口語の文学」と志らぴーさんが仰っていたこともよくわかりました。これからは、様々な落語を聞きたいし、何より落語を観にいきたいと強く感じました。次の公演も楽しみにしてます!!!!

・落語は人間のダメなところが詰まっているから、自分のダメなところが落語で救われると、このようなことを志らぴーさんはおっしゃっていました。今回の落語会では4つのお話だけでしたが、とてもそれを感じましたし、ダメなところを笑うことができました。自分のことがどうしても嫌いになりそうな時は落語に戻ってきたいと思います。

 

 

 

5.終わりに

今回は落語会の取材という大変貴重な機会で私たちは大満足です!
これを読んでいる方にも、落語は知ってるけど意識したことがないという方が多いでしょう。
人間のダメなところを笑い飛ばすことができる落語で日々の疲れをリセットしましょう。
皆さんも、生の落語をぜひ聞いて、一緒に楽しみましょう!

 


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落語レポート サムネイル.png
 
5月27日(土)に行われた、立川志らぴー やったぜ!二ツ目昇進落語会in山形へYUM!の2人で行きました。

 

おそらく多くの大学生がそうであるように、私たちは落語を生で感じたことがありません。存在は知っているけれども、意識したことがない。私にとって落語とはそんな存在でした。しかし今回の公演はとても印象に残りました。

 

落語初心者の私たちが感じた印象をレポートするので温かい目でご覧ください。

 

会場の様子はこんな感じです。
落語会の会場である遊学館
遊学館内のホール前
志らぴーさんの記事と二ツ目昇進祝いの色紙
お祝いのお花
 

 

1.公演前に舞台裏に潜入 

志らぴーさんのご厚意で、開演前にインタビューをさせていただきました。

 

意気込み

「山形出身ではないため、山形に繋がりを作る第一歩の会だと思っています。お披露目で終わるだけでなく、今回の盛り上がりを維持したまま、ここからさらに輪を繋げていきたいです。」

 

ー繋がりという言葉を大切にしているのですか

「そうです。例えば、この遊学館は私が落語と出会った場所です。DVDコーナーにあった落語を見たことがきっかけで落語に興味を持ったんです。例えば、ふすま同窓会は山形大学の卒業生である私を温かく応援してくださいました。在学中は一度も関わったことなかったんですけどね(笑)。そういった繋がりを大切にしています。」

ーお披露目で終わらないような策は何かありますか

「定期的に山形で落語会を開催したいと思っています。独演会を3ヶ月に1回の定期会にしたいですね。実は、早速第1回目の定期独演会『落語アリマス』を2023年7月23日(日)に山形テルサで開催予定です。あとは蕎麦屋などの飲食店での開催なども考えております。」

山形での独演会の第1回目である「落語アリマス」

 

落語は口語の文学

「落語の特徴として、口語で伝承されている、口語の文学ということがあります。落語の言葉は不完全な日本語です。不完全だからこそのリアリティ、日常感があります。」

ー口語の文学とは面白い表現ですね。日常感があるというのは。

「百川という勘違いをテーマにした古典落語があるんですが、間違いを指摘された時に『じゃ、ちがった』といけしゃあしゃあと言う人が出てくるんです。私なんかはこれを真似して友人に何か間違いを指摘された時に『じゃ、ちがった』とおどけたりします(笑)。日常で使えるでしょう。」 落語は人間が出る 「日常で使われている口語だからこそ、話し手によって落語の味が変わります。落語は人間が出るというのはよく言われることです。そそっかしい人がそそっかしい人をやると面白い。パーソナリティに合った落語があります。」 ーそれでは志らぴーさんはどんなパーソナリティを持っているのでしょうか。 「私はのんびりした落語が自分に合っているのかなと思います。」 ー人間性はどのように育てているのですか。 「映画などの芸術に触れることです。私は家元と志らく師匠の影響で見ることが多いです。例えば、ミュージカルの『雨に唄えば』、映画は『昼下がりの情事』と『情婦』と『アラビアのロレンス』などがお気に入りです。」 演目ごとの感想 全ての演目が終わり席を立つと、会場の外には演目が書かれた紙が貼ってありました。

 

 

2.演目ごとの感想

浮世床〜夢〜

あらすじ〜

あまりにもうるさいいびきをかいて眠っていた半次を起こしたところ、出会った素敵な女性と、その一夜にして、同じ布団に入って寝ようとしたというあまりにも夢のような惚気話をし始めたのだ。
そんな夢みたいな話のその後の続きを半次に求めたところ、「一緒に寝たところで…俺を叩き起しやがったのは誰だ!?」と言い放った。
つまり全て「夢」の中の話だったと分かったところで落語のお話は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・実際に聞いてみて、起こされた半次が惚気話を始めた時から、その話が夢だと明かされるまで、一時も夢の中の話をしているのだと疑わずに聞いて、最後に明かされた時の、裏切られた感がたまらなく面白かったです。

・舞台が床屋から動かないのにも関わらず躍動感あふれる語り口で楽しめました。落語の中の人物が話している様子を、落語家が私たちに伝えるという2回の伝聞が必要なので難しそうだった印象です。

 
 

ちりとてちん

〜あらすじ〜

今日が誕生日の旦那は、世辞の上手い喜ィさんを読んで昼から一杯やった。喜ィさんは出される料理やお酒、更にはお米など全てに対して「生まれて初めて食べる」と言い、「美味い」と言いながら飲み食いする世辞の上手い人である。それと打って変わって、知ったかぶりばかりする竹さんは、どの料理やお酒に対しても「美味い」の一言は言わず、「炊き方が下手くそ」なと文句ばかり話している。そんな竹さんに仕返しがしたい旦那は、奥さんが忘れて腐らせてしまった豆腐(黄色く毛羽立ち、なんとも臭い代物)を竹さんに食べさせようとする。その豆腐の他様々なものを混ぜて瓶に詰めたものを、「ちりとてちん」と呼んだ。実際にはそんなものは存在しないのだが、竹さんは「知ってる」「食べたことある」と話す。実際に食べると、オェ〜と言いながら、美酒で流し込み美味かったと話す。旦那が最後に「私食べたことないんだけどどんな味するの」か問いかけたところ、竹さんは「ちょうど腐った豆腐のような味がする」と話してこの落語は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・実際に聞いてみて、なんでも知ったかぶりするのは良くないというのは改めて痛感したところでした。そのうえでこの落語は今回、私の中で終始笑い続けていた落語のひとつで、落語の世界を親しみやすい話で大好きな物語でした。

・随所に山形人へのジョークが含まれていた。知ったかぶりをしただけで腐らせた豆腐を食べさせるの可哀想だなって思っちゃいました。このあとの関係性がどうなっちゃうのかなと考えさせられる落語。喜ィさんのお世辞が面白かったです。
 
 

舟徳

〜あらすじ〜

居候の身の徳兵衛さん(徳さん、若旦那)は、親方に、どうしても船頭になりたいのだと話す。そして親方は船頭仲間に若旦那が船頭になることをお披露目する。
親方から呼ばれた船頭仲間達は、始め、親方に怒られるのかと思い、過去に犯した過ちを、怒られる前に謝ろうとした。しかしながらその全てが、親方には初耳で、やぶ蛇になってしまう。
ある日船頭が皆出払っている時に、馴染みの客がやってきた。船宿のおかみは、船頭はいないと話すが、客が、徳さんのことを見つける。
徳さんは以前、赤ん坊連れのおかみさんを川に落としてしまったこともあるそうで、本人は「大丈夫だ」と話すが、馴染みの客は一気に緊張の面持ちになった。
船宿を出た舟は、途中石垣にぶつかったり、波にやられ転覆しそうになりながらも目的地に向かって進んでいく。漕ぎ疲れた徳さんは、あってのことか、客に「前から船が来たら避けてください」などと話す。
その後目的地の大桟橋の近くまで来たが、浅瀬に乗り上げてしまった。
徳さんは、客に、土手まで歩いてくれと話し、別れ際にぐったりしていた。客が「若い衆(=徳さん)、大丈夫か?」と聞くと、「帰るとき船頭1人雇ってください」と徳さんが話してこの落語は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・事故ったりして大変なこと、もう漕ぎ疲れたことから、帰りは別の人を雇ってくださいと話していました。しかし、この話は初心者の私には少し難しかったです。というのも、物語の中で、船頭仲間達が過去の過ち等を親方に話す場面までは面白かったのですが、その直後の、お得意様が来た時に、船頭が皆出払っていて、徳さんしかいなかった時のシーンを理解するまで時間がかかりました。話のあらすじ等も知らなかったので、このお話が、徳さんの成長の物語になるのかなと感じていたところもあり、シーンの移り変わりのタイミングで難しさを感じてしまい素直に笑えなかったところもありました。この直前にやっていた、ちりとてちんがとても面白すぎたこともあってか、難しさが残る話に感じました。しかし、真打がやるというこのお話に挑戦した志らぴーさんは素敵だなと感じました。私も挑戦する気持ちを大切にしたいです。

・若旦那の人柄が、注目されたくて自信満々でした。それでいてあまり努力をしない人なのかなと感じました。これは志らぴーさんのパーソナリティから離れている印象があるので演じるのは大変なのかなと思いました。でもこれを選んだ理由が「志らく師匠のきっかけの落語だから」ということで納得しました。

 

 

笠碁

〜あらすじ〜 

碁がたき(碁敵)同士が、今日は「待った」なしで打とうと碁を打ちはじめる。しばらくすると、形勢が悪い方が「待った」と話す。相手は「待てない」と言い、お互い「待て」、「待てない」と強情を張る。
挙句の果てに、一方は一昨年の暮れに金を貸したのを恩に着せ、返す日を延ばしてくれと言われた時に、「待った」してあげたでは無いかと言い出す。これには相手も怒りだしお互い「大へぼ」、「大ざる」と罵りあって喧嘩別れとなる。
そのうちに雨が何日も続き、1人は、喧嘩別れした相手が懐かしく、碁が打ちたくてたまらなくなる。傘がないので、菅笠を被って出かける。もう1人も碁が打ちたくてしょうがないのだが、碁会所では、皆強すぎて相手にならないから、喧嘩別れした相手が1番いいのだという。相手は相手で、自分しか相手がいないことを分かっている。
先程出てきた菅笠を被った相手が家の前を通りかかるが照れくさく中へ呼び入れることが出来ない。
相手も照れくさく、家の前を何度も行ったり来たりするだけだったので、碁盤を持ってこさせ一人でパチン、パチンと碁石を置き始める。相手も音が気になって近づいてくるが、また通り越してしまう。どうにもたまらなくなって、お互いに「へぼ」と言い合う。私がへぼかどうかを、1番しよう(1勝負しよう)と話し、その誘いに相手も乗る。
中に入ってきて喧嘩別れしたことなどすっかり忘れて碁を打ち始めるが、なぜか碁盤に雨のしずくが落ちてくる。いくら拭いても落ちるので、ひょいと見上げると、まだ被り笠を取ってないことに気づき、「待った」と話しこの落語は幕を閉じる。

 

(私たちの感想)

・落語の本編に入るまでの志らくさんの話が面白く、ちりとてちん同様、私の中では笑いが絶えない落語でした。お互いに喧嘩別れしても、私にも相手しか、相手にも私しかいないと信頼し合ってる姿、そして何より志らぴーさんがこの落語がきっかけとなったことも頷けるとても面白いお話だなと思いました。

・圧倒的に面白いなと思いました。運営の方に「初めての落語が志らくさんで羨ましい」と言われた理由がなんとなくわかります。物語に引き込まれるどころではなく、館のコマ使いの一人となって実際に様子を見ていた気分です。掛け合いが身内ネタという属性を持ち、たわいない振る舞いで強烈な面白さを生んでいました。特に、私含めお客さんが手を叩いて笑った瞬間に「そこ手ぇ叩いて笑ってるんじゃないよ!」と言われた時に衝撃を受けました。らく萬さんと志らぴーさんが山形人狙い撃ちのジョークを使っていたのも、身内ネタなら些細なことも面白くなるという効果を狙っていたのかもしれないですね。

  

 

 

3.気になったこと

初めての落語ということで気になったことがたくさんありました。紹介します。

 

演目は直前に決まる

なんと落語の演目はお客さんの反応を見ながら直前に決めるそうです!

 

私たちの取材が終わったあとから開演までの時間で、らく萬さんから山形県人の人柄について尋ねられました。山形の人はラーメンが好きで、特にこれからの季節、冷やしラーメンが大好きだと伝えました。すると、らく萬さんの枕で冷やしラーメンの話が出てきたんです!

直前に仕入れた話題さえも組み込むことができる落語家にびっくりです。

落語の流れ

落語の本編が始まる前に枕と呼ばれる導入があります。この導入がすでに面白い。本編と比べて体の動きは少なく、起こったことを話している様子が、いわゆるエピソードトークのように感じました。

何より驚くことなのが、この枕、本編の導入なので話したい落語へ滑らかに繋がるような工夫がされていることです。身の上話を聞いているうちに落語に入り込むことができます。

本編に映るときに羽織を脱ぐのですが、枕と本編のグラデーションに気づくための仕掛けですね。

 

始まりと終わりの太鼓

始まる時と終わる時に太鼓が鳴っていました。調べてみると、始まりは「ドンドンドンドンドンと来い」、終わりは「でてけでてけ」と気持ちを込めて打つそうです。

マイクなどの拡声器がなかった時代の工夫を感じます。

 
 

 

4.全体の感想

・今回の落語全体を通して、面白かったものは、落語の物語の世界の一員に自然となっていたと感じます。難しかったものは、どちらかと言うと映画やドラマを見ているような感覚がしました。
落語の物語の世界に聴者を言葉だけで引き込む落語家はとても素晴らしいものだと感じたし、「口語の文学」と志らぴーさんが仰っていたこともよくわかりました。これからは、様々な落語を聞きたいし、何より落語を観にいきたいと強く感じました。次の公演も楽しみにしてます!!!!

・落語は人間のダメなところが詰まっているから、自分のダメなところが落語で救われると、このようなことを志らぴーさんはおっしゃっていました。今回の落語会では4つのお話だけでしたが、とてもそれを感じましたし、ダメなところを笑うことができました。自分のことがどうしても嫌いになりそうな時は落語に戻ってきたいと思います。

 

 

 

5.終わりに

今回は落語会の取材という大変貴重な機会で私たちは大満足です!

これを読んでいる方にも、落語は知ってるけど意識したことがないという方が多いでしょう。

人間のダメなところを笑い飛ばすことができる落語で日々の疲れをリセットしましょう。

皆さんも、生の落語をぜひ聞いて、一緒に楽しみましょう!