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菊地美彩 人文学部人間文化学科言語コース 2年

派遣期間:平成29年8月29日~9月14日

<日本語教室での活動内容>
 私がラトビアに着く前に、他の学生がクラスをレベルごとに分けていてくれたので、学生の担当を決めるところから始めました。私は主にアドバンスクラスを担当することになりました。授業では、私が少し上級だと思った文法事項を教えていました。その中でも特に印象に残っているテーマは、オノマトペ、助詞「~だけ」「~ばかり」、動詞「あげる」「もらう」「くれる」の3つです。
 オノマトペは、例えば雨が降る音の「ぽつぽつ」「ザーザー」などの擬音語などのことです。これは日本語母語話者ならば当然のように理解される音ですが、本当に「ぽつぽつ」と音がなって雨が降っているわけではないので、説明に困りました。ある生徒さんに、次の授業ではオノマトペを取り上げると伝えた際に、「例えば、日本語では雨の降る音をぽつぽつと言ったり、ザーザーと言ったりする」と言ったところ、信じられないと言われてしまいました。 
助詞「~だけ」「~ばかり」はニュアンスを伝えるのが難しく、図で説明しました。いくつか例を出して、そのうちの1つを図にしました。
 最後の「あげる」「もらう」「くれる」については、今回授業で取り上げたテーマの中で一番難しかったように思われました。このテーマは2回取り上げました。1回目は、補助動詞として「私は彼に道を教えてあげる」などのように説明しましたが、大変難しく、どの場合に誰が道を知っているかを質問形式にして伝えました。2回目は、友人に手伝ってもらい、補助動詞としてではなく、「私は彼に花をあげる」の例文を軸とした動詞としての用法で説明しました。どの場合にどの動詞が使えるのかを人称ごとに整理したり、例外をさがしたりするのは大変でしたが、説明のあとに作ってもらう生徒さんの文章を確認したところ、きちんと理解されており、大きな達成感を感じました。
 また、私の言いたいことをきちんとした英語に訳してから、さらにラトビア語に訳し、そのラトビア語で返ってきた文をまた英語に訳し、私が分からなさそうにしていると日本語に訳してくださった親切な生徒さんもおり、みんなで協力してで授業を作れたと思います。

<日本語教室以外での交流活動>
 日本語教室で出会った方たちにおいしいご飯屋さんを紹介してもらったり、魚料理を食べさせてあげると言ってくださった方にご自宅に招いていただいてラトビア料理をごちそうになったりしました。たくさんのじゃがいも料理や、うなぎ、にしんの魚料理は本当においしいものばかりでした。この方々のおかげで私はとてもラトビア料理が好きになりました。
 また、休日にはリガからバスで1時間ほど離れたシグルダという町を訪れました。ここでの一番の目的は観光でしたが、ラトビア語しか話せない人と切符を買う為に筆談で交渉したり、一縷の望みをかけて日本語で書かれた観光地図はないかとたずねてみたり、少しこわいおじいさんにロシア語でロシア語が分からないと言っているのにしつこく話しかけられたり、バス停のローマ字の読み方が違うだろうと言われたりと、様々な形で現地の人と交流できた旅でした。

<参加目標への達成度と努力した内容>
 私はこのプログラムに参加するにあたり、大きく2つの目標を立てました。
 1つ目は、私がラトビア語を理解する前に、純粋なラトビア語の音声的特徴を把握することです。私はラトビア語については資料でしか確認したことがなく、ぜひその特徴を知りたいと思っていました。今回、リガの町を散策すると様々な言語が話されており、意味は分からずともドイツ語、ロシア語の判別できる私にとっては実に楽しい場所でした。ラトビア語はその2つの言語の特徴を有していることが分かり、とても興味深い体験ができたと思います。
 2つ目は日本語を日本語ではない言語でどこまで工夫して教えられるかを試すということです。私は主にアドバンスクラスを教えていたので日本語を使って授業をしていましたが、それでも伝えるのが難しいニュアンスは英語で例を伝えなければならず、自分の英語の能力不足に対する申し訳なさと、相手に伝わる例を探す難しさを痛感しました。

<プログラムに参加した感想>
 今回、私の周りで聞こえていた言葉や、書かれていた文字のほとんどが私の全く知らないラトビア語でしたが、それでもその人が何を伝えようとしているのか、そこには何が書かれているのかを解読しようとすることによって、自分の知らない言葉への恐れが消え、新たな興味が湧きました。幸いにも、自分で予想した後にすぐに正解を聞くことができたので、大変勉強になりました。また、ヨーロッパの言葉は、日本語母語話者の私にとっては大変早く聞こえるのですが、約2週間の滞在で少しずつ慣れることができたと思います。

<今回の経験による今後の展望>
 1つ目は、自分の興味のある分野をさらに学ぶことです。今回、現地の方に多少のラトビア語の文法を教えていただきましたが、聞いたときにそれがどのような仕組みのものなのかに結びつけられなかった自分の勉強不足を深く反省しました。また、ドイツ語やロシア語に影響されたラトビア語だけあって、多くの共通点を発見することができましたが、さらに深くこの2つの言語の特徴を知っていれば、もっと多くの類似点を発見することができたかもしれません。そう思うと大変悔しいですが、この思いをバネにしてさらに邁進したいと思いました。
 2つ目は日本語の語彙力の増強です。私は初対面の人にはかなり丁寧な話し方をしますが、日本語学習者にとっては逆に理解しづらくなる原因となってしまいます。例えば、「この文法をご存じですか」と尋ねるよりも、「この文法を知っていますか」とした方が理解されやすいので、この言い換えを素早くできるようになりたいと思いました。このようにすれば、「知る」のとても丁寧な話し方が「存じる」だと伝えることもできるので、文法の説明でも生かしたいと思いました。

 最後に、大変有意義な私のラトビアでの滞在を支えてくださった、ラトビアで出会った全ての皆さんと、共にラトビアに渡った学生大使の皆さんにここで御礼を申し上げます。本当にありがとうございました!

シグルダの画像
シグルダ

リガの景色の画像
リガの景色

友人宅で食事の画像
友人宅で食事