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二瓶梨紗子 人文社会科学部 人間文化コース 2年

派遣先大学:ベトナム国家農業大学
派遣期間:令和4年9月1日~9月10日

1〈日本語教室での活動内容〉
 日本語教室は平日18時30分~20時30分の1日1回のみ開かれ、日本人とベトナム人の1対1で授業を行った。初級者を担当することが多かったため、基本的には平仮名の書き方や発音、学習した平仮名に関連した簡単な単語を教えた。カルタやフラッシュカードを用いて、生徒が退屈せずに気軽に学習できるよう努めた。「みんなの日本語」というテキストを持参して受講する生徒もおり、それを参考にして授業を展開することもあった。色の名前を教えた際は、自分の着ている服や教室にある物が何色か当てるクイズを出して、ゲーム感覚で覚えられるようにした。

 生徒の様子は様々であった。「ゆ」と「つ」の発音に苦戦する生徒や、「とめ」や「はね」が不明瞭な生徒が散見された。しかし、何度か一緒に発音を練習したり、書いた字に直しを入れたりした後はすぐに上達していた。また、新しい語句を教えると「それは漢字で何と書く?」とすぐに聞いてくる生徒もいた。その生徒は少々複雑な漢字にも積極的に挑戦し、覚えにくい字は納得いくまで何度も練習をしていたのが印象に残っている。最も驚いたことは、生徒の中に小学生くらいの女の子がいたことである。英語学習でさえ本格的に始まっていないであろう年齢でありながら、日本語を学びに来ているということに衝撃を受けた。その一方で、英語も日本語も通じないがゆえに、コミュニケーションを取ることが他の生徒よりも一層困難に感じられた。

2〈日本語教室以外での交流活動〉
 日本語教室以外では、現地大学の英語教室に参加し、日向クラブのメンバーと外出した。英語教室では高い英語力を持った学生が多かった。発音のアクセントや癖などが日本人とは異なり、聞き取ることが少々困難であった。時折自分の発音が現地学生にうまく伝わらないこともあり、能力差を実感した。会話の内容で興味深かったのは、K-POPアイドルがベトナムでも人気があるということである。確かに、バスの中でK-POPが流れたりスーパーに多くの韓国製品が陳列されていたり、ベトナムも日本同様に韓国の存在が身近であることが感じ取れた。

 上述した以外の時間では、日向クラブの方々のおかげで多くの刺激的な体験ができた。バッチャン村で陶芸体験をしたり、ハノイセンターにある美術館を訪れたり、非常に充実した時間を過ごしたと思う。クラブの方々と盛り上がるのは、やはり漫画やアニメに関する話題であった。特に驚いたのは、ベトナムでボーイズラブ・ガールズラブの漫画が禁止されていないことである。これらの作品は検閲の対象として取り締まられるという先入観を持っていたため、かなり意外に感じられた。同性愛の漫画は案外ベトナムで人気があるようで、「これ面白いから読んでみて。」とクラブの方に勧められたことが印象的である。

3〈参加目標への達成度と努力した内容〉
 日本語・日本文化を紹介する場面においては、自分の体験談や考えを織り交ぜながら発信することを目標としていた。この目標は75%程度達成できたのではないかと思う。例えば、日本文化を紹介する際は、高校の部活動で経験した弓道について紹介した。弓道を初めて知った学生や、強い関心を示す学生が見受けられた。実際に体験した日本文化を伝えることで、自分の話が説得力を持っているように感じられ、会話全体の充実度が高まったように思われる。また、山形や自分の地元についても紹介し、現地学生に日本の奥深い部分も知ってもらえるように努力をした。

 プログラム全体では、相互理解を深められるようなコミュニケーション能力を身につけることが目標であった。この目標の達成度は70%程度ではないかと思う。まずは、なるべく一方的に自分の話をすることがないように努めた。積極的に質問をしたり、答えたくても日本語が出てこない様子の時は一緒に考えたりして、相手が発信しやすいように心がけた。そして、「これはベトナム語で何?」と聞いて少しでもベトナム語でコミュニケーションが取れるようにメモをしていた。覚えた言葉はすぐに使い、関係を深めることができるように努力した。次第に冗談を言い合えるような関係となり、相互理解を深めることはできたと思う。しかし、複数人で交流することが多かったため、1対1で濃密なコミュニケーションを取る機会をより多く作るべきであったと反省している。

4〈プログラムに参加した感想〉
 ベトナムでの生活は日本とは全く異なると意識していたつもりであったが、それでも、ありふれた場面で日本人の価値観が滲み出ていたと感じる。例えば、部屋のシャワーからお湯が出なかった際は、しばらく我慢すれば大丈夫だろうと思い、すぐ報告をせずに使用し続けた。しかし、海外において我慢することは美徳とは限らず、むしろ自分の首を絞めるものであると痛感した。ベトナム到着後の最初の数日間は、こうした日本との差異に目を向けがちであったが、次第に共通点にも気付いた。内向的で人見知りする人がいたり、恋愛の話で盛り上がったり、本質的には自分や身の回りにいる人々と何ら変わらないと感じられた。

 従来よりも短い期間であったが、多くの思い出と友人を作ることができ、有意義な時間であったと思う。

5〈今回の経験を踏まえた今後の展望〉
 「グローバルな人材」というとハードルが高い印象があったが、今回の経験を機に捉え方が変化した。不完全な言語能力でも、海外の人々とつながりを持ち、曲がりなりにもコミュニケーションを取ること自体がグローバルな人材への一歩であるのではないかと考えるようになった。しかし、やはり語学力は大きな武器である。よって、今後は語学力を向上させたい。語彙はもちろんのこと、会話における瞬発力や言い回しなどを養うことを目指す。また、世界とのつながりを積極的に作り続けて、深みのある交流ができるよう努めたい。

英語教室の様子の画像
英語教室の様子

文廟での様子の画像
文廟での様子