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大崎教授の海外駐在記「延辺大学駐在記3(2)」

 4月28日に、理学院で行った講演会で、学生に「日本と中国の教育システムの違いは何ですか」「研究をする際に、最も重要なことは何ですか」と、英語で問われました。

 「私は中国の教育システムを良く知らないので、日本と比較できません。私は、子供のころ、勉強が大嫌いでした。しかし、大学に残って研究者になったの は、研究とは、好きなことを、自由に、好きにやっていいので、これは遊びと一緒だと思ったからです」「そうしてみると、研究をする際に、最も重要なことは、自由かな」と言いました。すると、大きなどよめきが起こり「freedom」という英語が、かしこで、つぶやかれました。

 往々にして、滞在先各国の宿舎のテレビは現地語だけです。見ていても分からず、つまらないので、インターネットでユーチューブを良く利用します。これだと、数時間遅れで日本のテレビ番組を見ることができます。しかし、中国ではユーチューブが映りません。

 日本の新聞は、中国でもインターネットで読むことができるのですが、画面の横に出てくる女性ファッションなどの広告が、時々消えます。肌の露出度が大きいと想像される場合です。こんなことにも目を光らせて、対応しているのかと、驚く一瞬です。

 延辺大学の滞在は、これで3年目になり、多くの人々が様々なことを率直に話してくれます。中国政府やその政策も話されます。そういう人に対し、私も、漢族と朝鮮族の人々の考え方の相違を知りたくて、最もヒートアップするような、日中韓の今日的話題を振ってみます。「なるほど」と思う、興味深い、考えたこともなかった視点を指摘されることが多々あります。しかし、残念ながら、ここには書くわけにはいきません。

 延辺大学は、中国の少数民族のうち、朝鮮族が多く住む、吉林省延辺朝鮮族自治州の州都延吉市にある大学です。朝鮮族の割合は、教員の70%、学生の60%、州民の40%です。授業は漢語(中国語)で行われますが、日常の会話の主体は朝鮮語です。州内の看板は、大学構内も含めて、全て朝鮮語と漢語の併記が義務付けられています。

 中国に住む朝鮮族は約200万人です。在米韓国系とほぼ同じ数で、在米韓国系が戦後の韓国からの移住者とその子孫に対し、中国の朝鮮族は、戦前の日本の(偽)満州国経営の際の、主に北朝鮮からの移住者とその子孫です。朝鮮族が、韓国・北朝鮮・在米韓国系、及び、漢族と異なる点は、親日家が多い、と、朝鮮族の人々が言います。

 大きな理由は、当地で親日家を表明しても、指弾されないからだそうです。その結果、朝鮮族は大学入学試験の外国語として、日本語をよく選択します。朝鮮語と日本語の文法構造が酷似しており、同じ努力で英語が60点なら、日本語は80点取れるそうです。この20点の差は、朝鮮族を難関大学・学部に軽々と送り込み、日本人気の要因にしています。

 別の理由として、出稼ぎの問題があります。延辺朝鮮族自治州は、発展著しい中国でも豊かな地域です。それは、韓国に出稼ぎに行った人々の送金で支えられています。しかし、出稼ぎの人々は韓国では社会の底辺に置かれ、良い思い出少なく、往々にして、より収入の多い日本に出稼ぎの場を移すそうです。日本語ができるからです。私が日本人だとわかると「日本では親切にされた」と、街で話しかけてくる人によく出会います。

理学院での講演会の画像
理学院での講演会

看板は朝鮮語と漢語の併記が規則の画像
看板は朝鮮語と漢語の併記が規則