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大崎教授の海外駐在記「ケニア駐在記(5)」

 はろばろと続く熱帯草原サバンナに点在するアカシアの木は、掌状に枝を伸ばし、その下に心地良い木陰を作っています。小枝は人間の小指ほどの長さの鋭い棘に覆われていて、シマウマやインパラなどの野生動物や、放たれた、ヤギ、ヒツジ、牛などの家畜の群れを寄せ付けません。ただ、キリンだけは、長い首をさらに伸ばし、長い舌を枝に巻きつけて、棘ごと小枝混じりのアカシアの葉を食べています。木陰では、家畜を追う棒を横に置いて、牧童たちが寝そべり、夕暮れを待っています。

 自分の子供時代は、そのような家畜を追うことと、水を汲みに行くことだけだった、とBoniface Kimwere君は言います。彼はJKUATの人文科学部経営学科の1年生で、数少ない奨学生としてナクルの片田舎から入学してきました。彼は、現在、日本語の勉強が面白くてしょうがない、と言います。月曜から木曜までの午前と午後に開講している山形大学サテライト・オフィス提供の日本語クラスにほぼ皆勤です。他の授業は大丈夫なのかと聞くと、「今、僕のメジャーは日本語です。他の科目の試験とぶつからない限り、日本語クラスに出ます」「他の科目の試験は大丈夫なの」「試験は簡単です。何の問題もありません」

 彼は日本語クラスに出るだけでなく、大学図書館で日本語の学習書を見つけ出して、どんどんと自習しています。今週に入り、彼がサテライトにやって来ました。「将来、山形大学に留学したい。どうしたら留学できますか」「僕はスワヒリ語よりも英語が得意です。英語を山形大学の学生に教えて、生活できませんか」これは日本語での会話です。私は日本大使館が行っている国費留学生の試験制度を紹介しましたが、それだけでは忍び難く、他に山形に行ける方法があるのかどうか調べてみる、と言わざるを得ませんでした。

私は毎週ほぼ2回の授業を行っています。授業時間は2時間で準備は大変です。その対策として、冒頭、日本と山形大学の紹介に時間を費やすことにしました。ヒントとなったのは、隣室のHunja先生の助言で、「JKUATの学生の99%は外国を知らずに終わる。知っても隣国のウガンダくらいで、何も代わり映えのしない世界だ。学生たちに日本を紹介して、発展している世界がどんなものかを教えてほしい」

 そのためか、山形大学への留学相談が増えてきました。今週に入り、Boniface君以外にも、工学部建築学科4年生の女子学生Ruth Nduhiuさんが、山形大学でインテリア・デザインの勉強ができないか、と相談に来ました。農学部農業土木工学科4年生のDavid Mburu君も、山形大学への留学の仕方を聞きに来ました。ケニアの学生を山形大学に留学させること。これが私の任務の一つです。しかし、学生が私費で日本に留学できるとは思えません。日本かケニアの国費留学生になってもらうしかありません。自助努力に頼らざるを得ないのです。しかし、山形大学へ留学したい、と具体的に山形大学の名を口にする学生を、山形に迎え入れる別の方策がないものか、山形大学の皆さんに考えて戴きたい、というのが私の偽らざる思いです。

農学部中庭の画像
農学部中庭

アカシアの木の画像
アカシアの木